芸能界からいきなり軍人として現地に派遣される、ということはない(他の職業でも同じこと)。

まずは新兵教育隊に入り、ここで5週間の基礎軍事訓練を受ける。

軍生活の開始に違いはないが、厳密に言うまず「入営(軍人の駐屯する施設に入ること)」して、基礎訓練の後に「入隊」することになる。

この基礎軍事訓練では「軍人としての心構え」と「基本的な武器(ライフル、手榴弾など)の使い方」および「移動の行動様式」などを学ぶ。

(BTSのJINが入営した第5師団のWebドラマ。韓国軍公式アカウントより)

韓国軍公式サイトでは「軍人としてのスタートを切る場所」と紹介される訓練所。以下のような日程が、同サイトにて紹介されている。

同化教育(最初の3日間=12月13日~15日)

※公式サイトでは「1人で軍隊に入る」という不安を和らげ、軍生活に馴染むための「同化」と説明。

入営行事

民間人から軍人に転換する最初の行事として、親しみのある両親兄弟、恋人の元を離れて真性なる大韓民国の軍人になるという誓いを立てるための行事。

個人物品支給

3D自動身体測定装置を使用して個々の身体測定値を確認し、戦闘服、戦闘ブーツ、下着、 体育服などの私服が提供され、また歯磨き粉、歯ブラシ、トイレットペーパーなどの軍隊生活に必要な品目も提供される。

身体検査

体重や身長などの基本的な検査に加え、個々の病気や特定の体質について詳細な検査が行われる。

特技・適正検査

各人が持つ特技の検査により、この先特殊騎兵としての任務を遂行できるかどうかを判断するための余地を確認。

3番めの検査については、一部芸能人なども入る「音楽隊」などの検査も含む。

最初の2週間でメンタル面での基礎を叩き込まれる

3日後から第2ステップに入るが、ここではまだ武器を扱うことはない。じっくりと精神面での教えを叩き込まれることになる。

1週目~2週目

<軍人基本姿勢の確立>

銃器授与式

軍人にとって最も大切な個人火器(ライフル)を支給される時間。自身の体のように大切に扱うことを学ぶ。

入所式

精神全力教育、軍人精神、国家観、安保観など、軍人として持たなければならない基本的な精神的姿勢を学ぶ時間。「なぜ自分がここにいるのか?」を学ぶ時間。

制式訓練

軍人が持たなければならない内・外的な基本姿勢を学ぶ時間。行進、敬礼の方式、軍隊でのエチケットなどに慣れ、軍人らしくなろうという訓練。

(兵務庁公式アカウントより「新兵教育隊の一日」。)

3週目から「武器の扱い方」

ここからいよいよ、本格的な軍事基礎訓練へと突入する。2015年頃「徹夜での歩行訓練はやり過ぎでは?」との議論もあったが、結局は現在も継続されている。

第3週~第5週(1月1日~15日)

<基本戦闘技術具備>

小銃の操作ならびに管理

個人火器の特性に慣れ、操作ならびに管理方法について熟達する訓練。

射撃術訓練

射撃を始める前の姿勢、照準、射撃をどのように行い、注意する事項は何なのかを学ぶ。

警戒

軍人の基本的な聞き取り調査要領/報告要領に関する教育

救急法

戦場で負傷した占有を救うための基本的な緊急処置技術を習得する訓練。除隊後も家族や恋人を救急する際に有用な訓練。

化学兵器

相手の化学、生物学、核攻撃に備え、自身を護り持続的な業務遂行のための能力を備える訓練。防毒マスクの着用、ガス実習などの訓練。

手榴弾

手榴弾の特性と仕組みを熟知し、使用要領に熟達し、戦闘で敵を効率的に制圧できる能力を備える。

零距離射撃

一定の射程距離から照準点と弾着点を一致させるための射撃訓練。

記録射撃

射程距離別の標的を命中させられる原理を理解し、熟達するための訓練。

 

最後の3週間は”濃密”だ。武器の扱いを覚えた後、本格的な「行動様式」の教育も受ける。

 

各自戦闘

方向感覚の維持、多様な目安物を利用して昼・夜間に移動する技術と各種障害物を克服し、敵の戦地を奪回するための方法に熟達する訓練。訓練場で学ぶ全ての戦闘技術が網羅されている。

完全軍装行軍

戦場で発生する多様な状況を克服できる戦闘体力を備えるため、20kgの完全軍装により訓練所20kmを行軍する訓練。

修了式

5週間の訓練を終え、輝ける二等兵の階級章を受け取る時間。狩猟式の後には両親との面会外出実施。

転属

情の移った訓練所を離れ、各自配置された部隊(または兵科学校)へ移動。

(基礎軍事訓練を終え、入隊場所へと向かう際のVlog。韓国軍公式アカウントより)

この基礎軍事訓練、韓国兵務庁サイトでは以下のような配慮が最大限に強調されている。

「しばしば、抑圧された雰囲気のなかで、統制型・叩き込み式の教育がなされるというイメージが語られますが、現在の新兵教育は自立と責任を基礎とした訓令兵主導型の方式へと変わり、心理的にも安定した状態で訓練が受けられる状況が出来ています」。

それでも「大変そう」と感じるのではないか。しかしこれは納税、教育、勤労と並ぶ「大韓民国国民の義務」。一般的に韓国の男性たちはこう割り切って考えて臨むのだという。

文=吉崎エイジーニョ(編集長)

※筆者が「Yahoo! ニュース個人」に記した記事を編集し直して掲載しました。