1月中旬から下旬にかけ、NewJeansと所属事務所側の法的闘争に新たな動きが出ている。
13日にADORが裁判所に対し「企画会社(芸能事務所)地位保全および広告契約締結などの禁止仮処分」を申請。23日にはNewJeansがSNSを通じ「一時的な新グループ募集」に打って出た。
これらの動きは、昨年11月28日のNewJeansによる会見に続くあるキーワードから読解できる。
「専属契約」
11月28日の会見後、このキーワードから徹底解説を行った現地弁護士がいる。
韓国の法務法人LKBパク・ソンナム弁護士。YouTubeに以下のタイトルで、同僚との一問一答形式での動画をアップした。
「NewJeansの専属契約解除、エンタメ専門弁護士が見た専属契約と違約金、今後の問題点は?」
昨年4月に始まった、HYBE・ADOR対ミン・ヒジン氏・NewJeansの一連の事態は法的な解釈を要する展開となっていっている。
「専属契約」とはどういったもので、現状にどんな影響を与えているのか。
その内容をご本人の許可を得て掲載する。
専属契約こそが最大のキーワード
―パク弁護士、一連のHYBE関連ニュースが続いていますが、NewJeansメンバーが主張する専属契約解除の理由は何でしょうか?
NewJeansメンバーが主張しているのは、ADOR側が先に専属契約に違反したということです。アーティスト保護義務違反やメンバーを軽視、さらには無視までしたとしています。
―そうですね、結局NewJeansメンバーの主張は、ADORが専属契約違反をしたということです。一方、ADORは立場を表明し、NewJeansの活動を十分に支援し、精算も適切に行ったとしています。結局のところ専属契約違反はしていない。両者とも専属契約違反の有無を争っているようですが、専属契約とはどのような内容で、違反した場合どうなるのでしょうか?
専属契約とは何なのか。文字通り、「全面的に所属する契約」です。NewJeansメンバーは、所属事務所であるADORを通してのみ芸能活動ができるという約束です。したがって、専属契約に基づけば、NewJeansメンバーはADORを通さずには芸能活動をしてはいけません。もしADORを通さずに芸能活動をした場合、損害賠償と違約金を支払わなければならないということです。
―NewJeansはADORを通してのみ芸能活動ができるということですが、では専属契約から抜け出す方法はないのでしょうか?
あります。事例も多いです。それが専属契約解除というもので、専属契約を途中で終了させることです。ただし、これは勝手にはできません。途中で終了させる正当な理由が必要です。そのため、現在NewJeansメンバーも、ADORが先に専属契約違反をしたため、私は正当に専属契約を解除するとしているのです。
―パク弁護士のお話をまとめると、専属契約違反をすれば違約金を支払わなければならず、しかし違約金なしで専属契約を解除するには、結局正当な事由が必要だということですね。
はい、その通りです。私はこれを離婚に例えて簡単に説明できると思います。二人が夫婦になると、お互いに離れてはいけませんよね。
勝手に離婚することもできません。でも相手が大きな過ちを犯した場合は離婚できるわけです。そうですよね。そして離婚の際は慰謝料が問題になりますよね。誰が原因で離婚したのか、そのため誰が慰謝料を支払うべきかを決める必要がありますが、現在NewJeansは「あなたは私を無視した、他のグループに気を取られて私をおろそかにした」と。少し誇張すれば、他のグループとの関係を主張しているようなものです。まるで浮気をしたという主張に似ていますね。
これはADORとHYBEを一体とみる前提ですが、それは一旦置いておいて、簡単に例えるとそのように言えると思います。
反対にADORは「NewJeansに対して、私にはそんなことはない。むしろあなたが先に私を離れて他の所属事務所に行こうとしている、浮気をしている」というような形で反論している状況なのです。
韓国弁護士が説く「違約金の算出基準」
―まず専属契約が終了したかどうか、違反があったかどうかについて見てきましたが、実はそれだけが問題ではありません。現在、違約金額も大きな問題になっていますね。最大6千億ウォン(約約655億円)ですよね。6千億というのはとても大きな金額ですが、どのように6千億という金額が算出されたのでしょうか?
一般的には、残りの契約期間に発生する売上額を違約金とする、このような形で専属契約書に記載されます。残りの契約期間に発生する売上額は、これまでに発生した売上で推測することができます。NewJeansの専属契約期間は7年です。我々がよく言う「魔の7年」ですね。NewJeansは2022年7月20日にデビューしました。そのため、現在約2年4ヶ月が経過し、残り期間は4年8ヶ月です。つまり、NewJeansの今後4年8ヶ月の間に得られる売上全額が違約金となるということです。
実際、ほとんどのアイドルはデビューして7年経つと最盛期が過ぎます。もちろんNewJeansは将来がより期待されるグループですが、通常はそうだということです。その点で、残りの4年8ヶ月はNewJeansグループとして活発に活動する期間の売上全額を要求する、このような主張になるかもしれないということです。
―過去2年4ヶ月の間にNewJeansが得た金額を元に、残りの契約期間4年8ヶ月の間に得られる金額を推算したら、それが約6千億になるということですね。
はい、そうです。そのため、この金額自体には一応根拠があるように見えます。ただし、ここで少し混乱があるのですが、先ほど私が売上と言いましたが、売上と利益は異なる概念ですよね。
―売上から費用を引いた残りの金額が利益ということですね。
そうです。我々がよく精算金と言っていますが、いろいろな費用を全て引いて芸能人が最終的に受け取るお金、それを精算金といいます。芸能人の立場からすると、この精算金が利益です。一方、NewJeansのアルバムを売って入ってきたお金、これがアルバムの売上です。ただし、このアルバムを売るには作曲費、作詞費、ミュージックビデオ撮影費、メイク費、衣装費など、費用が際限なくあります。売上からこれらの費用を全て引いた残りのお金が利益というわけです。売上と利益の差はこれだけ大きいのです。
ところが、芸能人に売上全額を違約金として支払えというのは、あなたが稼いだお金全額を違約金として支払えという言葉より遥かに恐ろしい言葉です。一種の罰金のようなものです。つまり、そうしたくなければ絶対に専属契約違反をするなという警告であり、一種の罰金だということです。
NewJeansが抱える「新たなリスク」
―それでは結局、NewJeansが罰金を払う理由があるのかないのか、それが事件の核心となりますね。ADORが先に専属契約を違反したのか、それともNewJeansが無断で専属契約を解除したのか、それが争点となるということですね。
はい、その通りです。一つだけ付け加えさせていただきたいのですが、紛争は紛争ですが、NewJeansは芸能活動を継続しなければなりません。記者会見をした翌日も現在も活動を続けていると言っていますが、そうなるとこの収益も継続して発生することになります。ではこのお金をどうするのか、これも現在問題となっています。
―まず、そのお金を誰に支払うのか、本当に問題ですね。ADOR側に支払うべきか、それともNewJeansメンバーに直接支払うべきか。
そうですね。これをもしNewJeansメンバーや、あるいは新しい所属事務所に支払った場合、もし万が一専属契約解除が認められないという判決が後に出てしまったら、ADORが本来受け取るべきお金だったのに、NewJeansメンバーか新しい所属事務所がそのお金を受け取って使ってしまったことになりますよね。ADORのお金を使ってしまったということです。そうなると、それに応じてさらに大きな紛争が発生する可能性もあります。ADORがNewJeansメンバーや新しい所属事務所の口座を仮差押さえする可能性もあるということです。
11月28日のNewJeansによる緊急記者会見を受け、ADOR側が声明を発表した。22時15分過ぎに韓国メディアが一斉に報じた。 全文を訳し紹介する ADORよりお知らせいたします。 内容証明に対する回答[…]
もうひとつのリスク「11月28日の会見での危険な発言」
―現在の対立はADORとHYBEというような双方の対立ではありませんよね。ここにミン・ヒジン代表も含めて三者関係です。記者会見でNewJeansメンバーもミン・ヒジン代表と共に活動したいと言いましたよね。そのため、現在は一般的な専属契約紛争より更に複雑に展開していますね。
はい、その通りです。これが単純な民事問題ではなく、刑事問題にまで発展しかねないという懸念が出ている状況です。
その点でミン・ヒジン代表が業務上背任に当たるのではないかという疑問が生じる可能性があります。NewJeansメンバーがこうしたミン・ヒジン代表との関係で刑事問題に巻き込まれる可能性は高くないと考えます。ただし、もしミン・ヒジン代表の業務上背任が認められた場合、ADORを出て新しい所属事務所への移籍活動を共にしたNewJeansメンバーも、ミン・ヒジン代表との共犯責任を問われる可能性が全くないとは言えないでしょう。可能性は非常に低いですが、ないとは言えません。
―当然のごとく、NewJeansメンバーはADORの取締役ではありませんよね。しかし(当時代表取締役だった)ミン・ヒジン代表の共犯となる可能性はあるということですね。
そうですね。その点で、記者会見でミン・ヒジン代表と共に活動したいと発言したNewJeansメンバーは、法的な観点からはもう少し慎重であるべきだったという残念さがあります。
―HYBE、NewJeans、ADORの紛争を短く見てきました。事件が複雑なので簡単に見ただけですが、NewJeansは4世代ガールグループの代表的存在なので、このように法的問題に足を取られるわけにはいきませんよね。
K-POP産業にも大きな打撃ですし、なによりもNewJeansの皆さんが本当に心を痛めているようです。
ですからこの戦いを最後まで引っ張るのではなく、結局は双方、あるいは三者間で合意をする必要があるのではないかと思います。まあ、戦いはすでに始まりました。始まったからには戦わなければなりませんが、対話の道を開いて進むべきだ、それがHYBE、NewJeans、そしてファンにとっても最善の解決策になるのではないか、このように考えています。
(了)
メイン映像=生成AIにて作成
11月28日、20時30分よりNewJeansがソウルにて緊急会見を開催した。ここでは会見内容のうち冒頭発言の全文を翻訳し、紹介する。 (以下の本文) ハニ:まず昨日初雪も降り、天気が非常に寒くなった中、今日の急な会見に来ていただき[…]