K-POP関連のニュースでよく出てくる「7年契約」「再契約」あるいは「魔の7年」という用語。
これはいったい何なのか。改めてその背景の紹介を。
要は
韓国の芸能界では歌手が所属事務所と契約する(通常は”デビュー”する)場合、「7年目に一度、歌手の方に再契約をするのか申し出る権利がある」ということ。
確固たる法的根拠があるものだ。
韓国の法律「マネジメントに関する付与と契約期間などの関連法」のなかの
「大衆文化芸術人(歌手中心)標準専属契約書 第3条第2項」(2018年11月発令)
を指す。
ちょっと難しい内容だが、韓国での該当法の翻訳を。
専属契約期間7年経過後の解除通告
芸能企画社(事務所)と歌手の専属契約期間は歌手が自由に定めることができる。
ただし、専属契約期間が7年を超えて定められる場合、歌手は7年が経過すればいつでも専属契約の解除を芸能企画社(事務所)側に通告することができ、芸能企画社(事務所)がその通告を受けてから6ヵ月経過すれば専属契約は終了する。
「大衆文化芸術人(歌手中心)標準専属契約書 第3条第2項」
「絶対に7年にしろ」ではない
日本では一般的に「最大7年にしなきゃいけない」と見られているかもしれないが、厳密にいうと「別に最大7年とは定められていない」。
契約機関は歌手側が勝手に決めていい。5年でも10年でもいい。ただ仮に7年以上で契約を結んでも、歌手の方に「7年目には辞めると言える」権利が保証されているのだ。事務所側から「契約更改しなくてもいい」のではなく、歌手側から「辞めると申し出られる」のだ。
ただし、通常は練習生からデビューさせてもらうのに、なかなか「細かい条件交渉」とは行かない。だからいったん「7年」という区切りを設けた、という面もある。
法制定の背景「問題が起きたから」
韓国芸能界では1990年代までは「社長と歌手に信頼関係があるから契約書もなかった」という時代もあった。
しかし近年になって歌手側と、デビュー時の所属事務所との契約を巡るトラブルが多く起きた。事務所側は「レッスン生時代から様々なサポートをし、育てたメンバーとともに長い期間収益を得たい」と考える。いっぽうで歌手側は「よりよい条件の事務所を移りたい」と考えても、事務所側が「育てた恩義」を盾にそれを認めないというトラブルもあった。あいまいな点をなくし、歌手側に有利にしましょうという法律なのだ。
最近では7年を逆算してグループの戦略を組む事務所もある。女性グループをデビューさせたばかりの某事務所の社長が「3年くらいは若々しくて、かわいい楽曲をやっていけばいい。その年にしかできないのだから」「その後はその時に考える」と言っていたことがある。
Apinkは「わかりやすい事例」
7年目で解散となるグループが多いなか、近年では2011年デビューのガールズグループApinkが2018年にこの時点でのメンバー全員が再契約。後の日本ツアーでメンバーは「7年目を超える時はすごく苦しい時期だった」と口にしていたほどだから、その苦悩はうかがい知れる。最年長メンバーはおよそ30代前後となり、メンバーによっては別の道に進む、という希望も持ちうるからだ。
その後グループは3年契約をさらに更新。しかし6人のうちの一人が別事務所と契約し、グループ活動は続けるという形態が取られた。そして後にその一人は脱退、という形になっている。