南田南弁護士は天才肌の原作 『ウ・ヨンウ』は韓国でなぜウケたのか 悪役のいない法廷ドラマ

(写真=ドラマ制作陣が韓国メディアに配布したキャラクターポスター/本記事の内容はネタバレを含みます)

10月19日、カンテレ・フジテレビ系で『南田南弁護士は天才肌』が始まった。芦田愛菜が、自閉スペクトラム症の新人弁護士・南田南を演じる。

原作は、2022年に韓国で放送されたドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』だ。

「面白いからです」

人気の理由を聞かれた脚本家のムン・ジウォンは、ひとことでこう答えたのだった。

2022年7月26日、ソウル市麻浦区のホテルで、原作の制作陣が記者懇談会を開いた。韓国のケーブルチャンネル「ENA」が放送したドラマで、このとき全16話のうち8話まで放送が進んでいた。初回0.9%だった視聴率は7話で10%を超え、8話は13.093%(ニールセンコリア、全国有料世帯基準)に達していた。筆者の50代の韓国男性の友人も「他のドラマは見ないけど、これだけは見る」と言い切っていたほどだった。取材先で出会った韓国の現場の弁護士も「はっきり言って面白い」と。

原作の何が、韓国の視聴者には「面白かった」のか。

悪役がいない「無害なドラマ」

韓国のスポーツ紙「MKスポーツ」は2022年7月8日、「無害な物語の力」という見出しで記事を出した。韓国のメディアがこのドラマの人気を説明するときに最も多く使ったのが、この「無害」という言葉だ。

韓国の経済メディア「時代(シデ)」の2022年7月22日の記事によると、このドラマには悪役も、無理な展開もほとんどなかった。1話でひとつの事件を片づける作りで、トーンは明るい。韓国の視聴者はこれを「ヒーリングドラマ」と呼んだ。

劇中には商品広告もなかった。キンパ、ヘッドホン、飲み物のどれも広告に使っていない。シデの記事は、PPL(劇中の商品広告)を入れなかったのはユ・インシク監督の考えだと書いている。

主人公の描き方も、無害さにつながっている。ウ・ヨンウは自閉スペクトラム症の新人弁護士だ。ドラマは、この主人公をかわいそうな人として描かなかった。韓国の経済紙「eToday」は2022年7月7日の記事で、韓国で放映された第1話のやり取りを例に挙げた。先輩弁護士のチョン・ミョンソクが、自分の失言をウ・ヨンウに謝る場面だ。

「すみません。『ただの普通の弁護士』という言い方は失礼でしたね」

ウ・ヨンウの答えはこうだ。

「大丈夫です。私は『ただの普通の弁護士』ではありませんから」

国民参与裁判(韓国の市民が参加する刑事裁判)の場面では、ウ・ヨンウは「この中で私ほどかわいそうに見える人はいません」と言い、自分の障害を弁護に使った。「eToday」は、障害を悲観せずに前へ進む道具として使う主人公の態度を評価している。周りの人物も、ウ・ヨンウを特別扱いしない。MKスポーツの記事は、このドラマが自閉スペクトラム症の人を「一緒に暮らす社会の一員」として描いたと書いている。

誰の真似もしなかったパク・ウンビン

また「eToday」の記事は、ドラマが自閉スペクトラム症の特性を細かく描いた点も挙げている。ウ・ヨンウは相手の言葉をそのまま繰り返す。クジラの話を始めると止まらない。人混みではヘッドホンをつける。ドアを開ける前に5秒待つ。毎朝、毎晩同じものを食べる。

ウ・ヨンウにだけ見えていたクジラを、恋の相手のイ・ジュノと一緒に見る場面も話題になった。この場面のクジラは小道具とCGで作ったという。。

この役を演じたのが韓国の俳優パク・ウンビンだ。パク・ウンビンは、ほかの作品のキャラクターや実在の人物を真似しないように気をつけた。声のトーン、手の動き、歩き方まで細かく作り込み、「それが高く評価された」(MKスポーツ、2022年7月8日)。

「ウ・ヨンウ」の制作陣はパク・ウンビンを1年待ったという。

パク・ウンビンは6月29日の制作発表会で、「何度もお断りしたのに、制作陣はそんな私を待ってくださった」と話した。ユ・インシク監督は7月26日の記者懇談会で、パク・ウンビンのほかに候補はいなかったと明かし、「パク・ウンビン・フォーエバー」と言った。

同時に、このドラマを広めたのはNetflixだった。「時代(シデ)」の7月22日の記事によると、最初に投資したのはNetflixで、韓国でテレビ放送する権利は新しいチャンネルのENAが持った。記事は、Netflixでこのドラマを見つけた視聴者が、ENAの放送に移ってきたと伝えている。ENAは当時、社名を変えてわずか2ヶ月の状態だった。「最初のドラマ作品で大当たり」したのだった。

いっぽうで、批判もあった。ソウル新聞は2022年8月2日のコラムで、自閉症の人を天才として描くのは同情の目よりはましだが、それもまた偏見だと指摘した。イトゥデイも、ソウル大学ロースクール首席という天才の設定に頼った物語作りを課題に挙げている。

(了)

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