韓国が「かわいいだけじゃダメですか」と言った日——異例ずくめの「CUTIE STREET 韓国シンドローム」

「今日も生きていこう」
「可愛さとは翻訳の必要ない万国共通語だ」
「歴代最高の外交」

2026年3月26日、韓国の音楽専門テレビチャンネル・Mnetの人気音楽番組「Mカウントダウン」EP.921の公演映像に寄せられた韓国語コメントだ。投稿しているのは韓国人。対象は日本のアイドルグループ・CUTIE STREETだ。

CUTIE STREETは、原宿発のアーティストマネジメント会社・アソビシステムが手がけるアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」が2024年8月に送り出した8人組ガールズグループ。同年9月にリリースしたデビュー曲「かわいいだけじゃだめですか?」はTikTokで爆発的に広がり、累計再生回数は75億回を超えた。1周年ジャパンツアーでは約48,000人を動員し、2025年末に日本レコード大賞新人賞を受賞、2026年2月には2周年記念の武道館単独公演を成功させた。

その彼女たちがMカウントダウンのステージで披露したのは、「かわいいだけじゃだめですか?」の韓国語訳詞バージョン「クィヨプギマン ハミョン アン デナヨ?(可愛いだけじゃだめですか?)」だ。日本のアイドルグループが自分たちの楽曲を韓国語に全編訳して韓国の音楽番組で歌う——それ自体がほぼ前例のない行為だった。映像は2か月で1,283万回再生、コメントは29,269件に達した。なぜ今、なぜ彼女たちなのか。


「批判」から「即完売2回」まで

日本のアイドルグループが韓国で熱狂を生んだ例は、これまでほぼ存在しない。彼女らが日本オリジナル曲を韓国語で歌い、大きな反応を得ている現象も新しいものだ。

比較対象として浮かぶのは2018年の「プロデュース48」だ。Mnetが制作した日韓合同アイドルサバイバル番組で、日本の大型アイドルグループ・AKB48のメンバーが参加したこの企画では、「小学校の文化祭みたいだ」という批判的な反応が韓国ネットに広がった。日本のアイドル文化と韓国の視聴者の間には、当時まだ大きな溝があった。

その溝が埋まり始めるのは2023〜2024年頃からだ。日本の音楽ユニット・ヨアソビが2024年の内韓公演で2万6,000人を動員し、日本のシンガーソングライター・米津玄師は2025年に2万2,000席を2日間で完売させた。ただしこれらはバンドやシンガーソングライターの話であり、日本のアイドルグループが韓国で単独公演を開いた前例はほぼない。

CUTIE STREETは同年3月28〜29日の初単独韓国公演を即完売。Mカウントダウン出演から4か月以内に世宗大学校大洋ホールでの再内韓公演も即完売となり、2026年6月にはBTSを擁するエンターテインメント企業・HYBEが主催する大型音楽フェス「Weverse Con Festival」のラインナップにも加わった。韓国最大の音楽ストリーミングサービス「Melon」のチャート「HOT 100」では65位(2026年4月13日時点)、音楽ストリーミングサービス「Spotify」が集計する韓国バイラルチャート「Viral Hits Korea」では1位に入っている。日本のアイドルグループが、K-POPフィールドの中に完全に組み込まれた。


需要が先にあった

なぜ彼女たちが韓国に向かったのか。答えは単純で、韓国が先に動いていたからだ。

2026年初頭、所属事務所アソビシステムの動画アクセス解析にある数字が現れた。YouTubeの海外再生比率が7%から16%に跳ね上がり、韓国からの視聴数が約10倍になっていた。メンバーのサクラバ・ハルカは「最近韓国ファンが増えたので韓国語を勉強している」と発言し、グループのMVには韓国語字幕が追加された。戦略的な売り込みではなく、データとして現れた需要への応答として、Mカウントダウン出演と「クィヨプギマン ハミョン アン デナヨ?」の韓国語パフォーマンスが生まれた。

アソビシステム代表の中川悠介はこう語っている。

「K-POPの勢いを感じる一方で、何十億もかけて長い時間育成しデビューさせるという形を今から真似しても勝てないと思いました」(note・エンタメビジネスウォッチャー・徳力基彦、2026年4月11日)。

KAWAII LAB.プロデューサーの木村ミサも「ほかと同じことをしても勝てない。自分だけができることを考え抜いた」と述べている(WIRED.jp、2026年4月28日)。K-POPを模倣せず、日本独自の「KAWAII」で当たる。その判断が、皮肉にもK-POPの本場で結果を出した。


K-POPから消えていたもの

なぜ需要が生まれたのか。背景にあるのは、K-POPガールグループのコンセプトが2020年代に大きく一方向へ傾いていたという事実だ。

「ガールクラッシュ」と呼ばれる、クールで強い女性像を打ち出すコンセプトが主流となり、「極限まで可愛い」という方向性を打ち出すグループは市場からほぼ姿を消していた。韓国の視聴者自身がこの空白に気づいていた証拠は、冒頭の動画のコメント欄に残っている。

「中途半端な可愛さは見ていられないが、極限まで振り切った可愛さは効く」(いいね9,828件)。
「かつて日本アイドルのこういうコンセプトは幼稚だと思っていたが間違いだった」(同3,725件)。
「プロデュース48のとき理解できなかった日本アイドルの本質をやっと理解した」(同4,042件)。

2018年に「批判」を受けた同じフォーマットが、8年後に「やっと理解した」と言われている。韓国の音楽コラムニスト・ファン・ソノプは「K-POP側で日本アイドルのコードへの十分な学習が進んでいたことが受け入れの土台になった」と指摘する(スポーツワールド、2026年4月)。


ギャルの再評価と、誠実さの一致

もうひとつの背景として、韓国Z世代における日本のビジュアル文化の再評価がある。

2000年代初頭のファッション・カルチャーを再解釈したトレンド「Y2K」の次の波として、韓国では1990〜2000年代の日本発「ギャル文化」への関心が高まっている。インスタグラムの「#ギャル」タグ投稿数は2025年3月時点で前年比45%増。韓国のマーケティング分析メディア「モビインサイド」(2026年6月)は「従来より刺激的な復古を求めるZ世代が、周囲を気にしない個性の象徴としてギャル文化を消費している」と分析する。

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この流れの中にCUTIE STREETが現れた。しかし反応が単なるトレンド消費にとどまらなかったのは、ローカライズへの姿勢が重なったからだ。

「クィヨプギマン ハミョン アン デナヨ?」の歌詞には固有名詞の置き換えまで施されている。原曲で「小野小町」とある箇所は「アプロディテ(Aphrodite。ギリシャ神話の美と愛の女神)」に、「原宿」は「韓国」に変えられた。このディテールに気づいた視聴者のコメントには1.1万件のいいねがついた。「K-POPが日本公演で日本語に変えて歌う理由がやっとわかった」というコメントには6.1万件。自分たちの楽曲を届ける相手の言葉と文化に合わせて作り直して歌う、その行為が韓国側に届いた。

韓国の英字新聞「Korea Herald」のコラムで、文化評論家のイ・ムンウォンはこう語っている。「従来、韓国でのJポップはバンドとロックにとどまっていたが、今やアイドル音楽とダンスポップが参入し始めている」。

「クィヨプギマン ヘド ドェ(可愛いだけでいい)」という言葉は、冒頭のバズり動画のコメント欄に何度も登場した。仕掛けたのではなく、呼ばれた。Mカウントダウンの映像が1,283万回再生されたという事実がその証となっている。

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