2024年10月18日にリリースされたロゼ&ブルーノ・マーズの「APT.」。11月2日に米国のビルボードHOT100で初登場8位にランクインするなど世界中で旋風を巻き起こした。これまで本サイトでは「アパトゥゲームって何?」「APT.の記録集」などこの楽曲を徹底的に研究してきた。
ここでは韓国やアメリカで起きたAPT.に関する「小ネタ集」を。
英語歌詞のなかに韓国語の「アパトゥ」
歌詞のほとんどは英語。オーストラリア育ちのロゼだが、ここではアメリカ式の英語発音で歌っている。ただし、APT.の部分だけは韓国式の英語発音で「アパトゥ」とはっきりと発音している。英語の「Apartment」から派生した「アパート」という単語は英語には存在しないためだ。「apart」という単語は存在するが、形容詞で「遠く離れた」という意味。
そもそもこれは英語にしようがない。歌のテーマになっている韓国の飲み会ゲーム「アパトゥゲーム」のイントロから採用した部分だからだ。公式歌詞では完全にハングルで「아파트」(アパトゥ)と表示されている。海外の非公式の歌詞サイトでは主に「Apateu」という綴りも使われている。
アメリカNBCの深夜トーク番組「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」に出演した際にはもはや「アパトゥ」のパートは「Korean singing」と表記されていた。
韓国ではたった1度だけ「テレビで歌った」
YouTube上で記録が残っている韓国での楽曲披露はこの1回のみ。11月29日にKBSに出演した。
この際、楽曲の冒頭部分でセリフとして言う「チェヨンイが好きなランダムゲーム ランダムゲーム」がカットされず本人がマイクを通して口にした。ランダムゲームとはつまり「アパトゥゲーム」のこと。チェヨンイとはロゼの韓国語名、パク・チェヨンから。
ニューヨークタイムズに登場!
しかしいっぽうで、ロゼ本人がメディアに出演してこの楽曲について語っている機会はいくつかある。
12月23日には米有力紙ニューヨークタイムズに登場。「APT.」に至る自身のストーリーを、10代の頃にまで遡って語った。
ニュージーランド出身で韓国人移民の両親の間に生まれたロゼは、8歳の時にオーストラリアに移住した。15歳だった2012年にYGエンターテインメントのオーディションを受け、合格して韓国に来た後、練習生生活を始めた。
それはかなり孤独な時間だったという。
「自分が経験しなければならなかった孤独をなぜこれほどに苦しいのか理解できなかった。すごくトラウマだった。衝撃的だったが、私は生き残った」
それを耐え抜けたのは、ある一つの思いがあったからこそだという。
「アイドルになるために遠くまで来たから。オーストラリアに帰って失敗した過程を全て説明したくなかった」
さらに「多くの女性アーティストの音楽を聴きながら育ち、彼女たちに共感しながら困難な時期を乗り越えた」とも。
その後、2016年にBLACKPINKとしてデビュー後の活躍は改めてここで語るまでもない。
そういったなかでも、「APT.」が収録された自身初のソロアルバム「rosie」リリース(2024年12月6日)の喜びは別格だったという。
「いつかアルバムを出す夢を見ていたが、実現可能だとは思っていなかった」
こんな思いをもって「APT.」をはじめとした楽曲制作に取り組んだのだという。
「私が10代の頃から共に育ってきたような、私自身が共感できる音楽を作りたいという個人的な欲求と必要性が大きかった」
外国人の聞き間違い…元祖は「アパテ」
12月1日には韓国JTBC「ニュースルーム」のインタビューに登場。楽曲誕生のエピソードをこう明かした。
「外国人スタッフの多いスタジオで韓国の飲み会ゲーム「APT」を紹介したんです。するとその後、スタッフたちが『アパテ、アパテ』と口癖のように言い始めたから、『じゃあ曲にしてみようか』と思い立ちました」
日本の筆者の周囲のおじさんは「アパツ」という向きが多いように見えるが…外国人による韓国語の「アパトゥ」の聞き取りの元祖は「アパテ」だった!
当初ロゼは「この曲大丈夫か?」と思っていた
そうやって完成した「APT.」。当初ロゼはこの楽曲を「消してください」とお願いしていた! ロゼは12月18日に公開されたファッション誌「Vogue」とのインタビューで「APT.」について「私が最も好きな韓国の酒ゲーム『アパート』からインスピレーションを受けた曲」と説明。
一方で、この曲のレコーディングを終えた直後のこんなエピソードを明らかにしている。
「スタジオから家に帰る瞬間を覚えている。お酒のゲームについての曲を書いたことが本当に大丈夫なのかと思った」
ロゼはこの後、スタッフに電話。楽曲を削除するようにお願いした。しかし…スタッフたちはすでに「APT. 」に夢中になっていたという。
筆者の個人的経験…
ちなみに筆者はこの曲のリリースから約2週間後、11月1日にロゼが所属するBLACK PINKの所属事務所YGエンターテインメント本社を取材で訪れる機会があった。この際に広報スタッフに「APT.の作詞・作曲・MV制作スタッフ・衣装・ヘアメイク担当の方などに取材できないでしょうか」とお願いしたら、あっさりと言われた。
「ロゼのソロ活動は別事務所でやってますから」
すでに昨年の2023年12月9日に「ロゼはYG系列のTHE BLACK LABELに移籍」と報じられていた。そんな基本情報も知らずに堂々と韓国本社の広報のまあまあ偉い方に質問ぶん投げてしまったのだった。
さらに余談だが「YG社屋内の食堂を取材させてください」「アーティストが普段何を食べているのか、日本の読者に伝えたいので」と申し出たが、これも「セキュリティの問題」として丁寧な断りが入った。
写真=写真=Atlantic Records