「0点」ありながらも音楽番組1位 韓国デビューのNiziU 予想を覆した栄冠

10月30日に韓国デビューを果たしたばかりのNiziUが韓国音楽ランキング番組「SHOW CHAMPION」で1位を獲得した。

11月8日水曜日にオンエアされた同番組で、10月30日から11月5日の集計結果により「デビュー曲(HEARTRIS)で1位」となったのだ。

近年の韓国での「デビュー曲1位」といえばBLACKPINK「WHISTLE」「Wanna One」の「Energetic」、(G)I-DLE の「LATATA」、ITZYの「DALLA DALLA」などだから、錚々たる顔ぶれと並んだとも言える。NiziU韓国デビュー曲「HEARTRIS」 韓国人も興味津々な「ミイヒの歌うパート」

いっぽうでこの1位にはちょっとした「背景」があった。

「SHOW CHAMPION」のランキング基準だ。

10月30日からの集計結果、NiziUには「0点」の項目がありながら、他の項目で他グループを圧倒。結果的に総合ポイントでも2位のジョングクに約500ポイントの大差をつけての栄冠となった。

SHOW CHAMPION番組公式サイトよりキャプチャ。筆者が編集
SHOW CHAMPION番組公式サイトよりキャプチャ。筆者が編集

NiziUは「音楽配信(韓国語では「音源」とも)0点」だった。これはどういうことなのか。

韓国での音楽配信プラットフォームでのダウンロードのポイントがまったくなかったのだ。確かに同番組で統計が反映される国内4大プラットフォームのうち少なくとも3つでは100位圏内に入っていない。CDの売上も含め、高いポイントを得られていない。詳細は後述するが、これは「韓国ではまだまだ固定ファン層が形成されていない」ということを意味する。

いっぽうで、ランキング評価のうち、20%を占める「放送点数」に関して言えば、1位を争うであろう存在だったIVE、SEVENTEEN、ジョングクが番組自体に出演せず。この項目ではこれらアーティストが「0点」となったゆえ、GOLDEN CHILDとの一騎打ちに。これに勝った形での一位になった。

そして何より、日本からの参加も可能な「グローバル投票」で2000ポイントを獲得。1チームだけ桁違いの結果も大いにプラス作用した。

韓国デビュー初日のNiziU YouTubeはロケットスタートで”1位”

特殊なランキング基準の背景

この「SHOW CHAMPION」の評価ポイントはいわば週末の金土日に放送される地上波の音楽番組との差別化を狙っているものと思われる。

韓国では現在、主要音楽ランキング番組が火曜日から日曜日まで6つ放映されているが、およそ1週間の流れはこうだ。

週の前半の3番組が「ケーブルテレビ」系

週の後半の3番組が「地上波」系

ざっくりいうと前者のケーブルテレビ系が「個性的な配点」。SNSやYouTubeの再生回数などのポイントが高い。いっぽう後者の地上波系が「オーソドックスな配点」で、つまり国内での基盤=音楽配信プラットフォームやCDの売上を高く評価する。それゆえ韓国のK-POPファンの間ではよく「ケーブル系で1位を獲ったのなら、次は地上波で」という話になる。

今回NiziUが1位を獲得した「SHOW CHAMPION」は特に週前半の「ケーブルテレビ系」の中でも海外ファンからの参与度が高いことで知られる。

いわば「日本のファンが押し上げた1位」とも言える1位だった。これは、韓国のK-POP評論家キム・ユナ氏が言う「近年のK-POPの評価において韓国での人気は忘れてはならないが、決して全てではない」という点からも「新しい歴史を切り拓いた」ということが言える。

さらに、平たい言葉でいうと今回のNiziUは「1位の”ワンチャン”があるとしたらSHOW CHAMPION」というところで、見事にそれが的中したというところ。大きな欠点もあったが、大きなアドバンテージもあった。それを活かしての1位獲得でもあった。

つまりNiziUの今回の1位とは…

大きな欠点(音楽配信0点)があったがアドバンテージ(海外ファン投票)がプラスに作用した1位。

日本のファンが押し上げた1位。

「K-POPの評価は韓国内でのそれが全てではない」を実証する1位。

競合アーティストの「欠席」のおかげ、という面もはっきり言ってある。

”ワンチャン”を生かした1位。

だった。

ちなみに11月9日(毎週木曜日)に放映される「Mcountdown」にもNiziUは出演予定だが、こちらは「音楽配信が50%」。それゆえ1位はなかなか難しいのではと予想される。

韓国コアファンの評価「やっぱり音楽配信の結果が必要」「韓国でのバラエティへの出演を」

NiziUの今回の「デビュー曲で1位」、韓国では「今回はちょっと難しいのでは」と見られていたのも確かだ。

他でもない、前出の「音楽配信」の結果がまったく出ていなかったからだ。

韓国・東国大学メディアコミュニケーション学科講師で韓国メディア「OSEN」元記者でもあるパク・サンヒョン氏は、NiziUの今回の韓国デビューの状況を追う中で、「なかなか音楽配信の結果が伴わないのはなぜだろう」という疑問を持つに至った。そして8日にNiziUが「SHOW CHAMPION」で1位を獲得する前に韓国のNiziUファンの掲示板にこの疑問を書き込んだところ、韓国のファンたちからこういった返事があったという。

「音楽配信ランキングはバラエティに出て認知度があると上がる。音楽はすべて認知度によるもの。BIGBANGがかつて音源(音楽配信)で苦労していたが、MBCのバラエティ番組『無限挑戦』に出演した後、それが大ヒットして、その後は音源が売れたように… 音源はとにかく大衆の認知度が必要」

「とりあえず韓国の認知度自体を上げることが急務だけど、最近数年で大型新人ガールズグループが多く出てきてすでに市場を占めているので、簡単ではありません。新型コロナにより一時新しいグループがデビューしなかった時期もあったが、それらがコロナが解除されて一斉に出たので、すでに地位を確保している新人ガールズグループとそこから遅れてデビューしたNiziUが競うのは簡単なことではありません」

「個人的には、韓国の地上波バラエティにも出て、韓国でのデビューをもっと広めてほしいのですが、いまや地上波もYouTubeバラエティなどと競合する時代です。そして認知度がないグループはバラエティ制作陣の立場で見ると視聴率に有利ではないので、これも簡単ではありません。やはりNiziUは今回のデビューアルバムはとにかく『認知度を上げる』という方向で見た方がいいですね。音楽配信チャートをすぐに上げることはやはり難しいと思います」

  • ルセラフィムのカズハが大阪のギャグを披露し話題となったバラエティ番組「知っている兄さん」

韓国のコアファンは「これからもっと韓国のバラエティに出演していくこと」それによって「コアファン層を増やしていくこと」が重要だと見ている。そして近々バラエティ出演があるとしたら、ひとまずは今回の「HEARTRIS」での活動を終えた後のことになるはず。そこに「音楽番組1位」という看板を引っ提げてチャレンジできる。

これはかなりよい流れだ。間違いない。

そして次なる韓国でのファンたちによる評価基準は「地上波音楽番組での1位」ということになるだろう。まだまだ次がある。だからこそNiziUは面白いのではないか?

執筆=吉崎エイジーニョ(編集長)

初出=Yahoo! ニュースエキスパート(”ヤフトピ”出来)

>韓国トレンド研究所 by 吉崎エイジーニョ

韓国トレンド研究所 by 吉崎エイジーニョ

韓国トレンド研究所からの新提案。韓国エンタメ・美容・フード・旅行情報+その背景にあるトレンド分析。ちょっと深掘りしながら韓国のリアルを感じる。日本のMZ世代の日常に新たな発見を。

CTR IMG