9月に入っても、韓国最大手のK-POP事務所HYBEと所属のNewJeansプロデューサー・ミン・ヒジン氏の対立が続いている。
そういったなかで、28日に複雑な展開を読み解き、参考にできるメディアの記事が公開された。
「法律新聞」
“「ダヴィデ」ミン・ヒジンの勝負…背任が鍵 捜査結果が今後の訴訟に影響”
ダヴィデ、というのは旧約聖書のストーリーの一つ「ダヴィデとゴリアテ」の登場人物を指す。若い羊飼いのダヴィデは強い信仰心により、巨大な戦士ゴリアテを石一つで倒してしまう。「弱者が強者に立ち向かう」という比喩で、韓国のメディアの記事でも非常に多く引用されるものだ。つまり韓国でミン・ヒジン氏は「強大なHYBEと闘う小さな存在」と見られているのだ。
「法律新聞」は、韓国の法律救助公団が発行するメディアで、4月からたびたびミン・ヒジン氏を巡る事態について法律の側面からの所見を発信してきた。法的な動きの読みなしには、この事態は理解ができない。参考・引用すべきメディアなのだ。
今回の記事でも、複雑な出来事が今、韓国でどうなっているのか。この点が明快に記されていた。「現在地」と「今後」というキーワードで読み解いていく。
現在地 原点の「背任容疑」の捜査が終わったところ 結果発表を待つ状況
記事はまず、HYBEとミン・ヒジン元ADOR代表の対立について「極端な状況になった」と記している。
「ADOR所属のNewJeansも加わり、状況が複雑化している」
「紛争の行方を左右するミン・ヒジン元代表の背任容疑に対する警察の捜査が最終段階に入った」
この「警察の捜査が最終段階」という点が、9月末の状況ではいちばん重要なポイントのようだ。
「法律新聞」はこう続けている。
「27日の取材によると、事件を捜査中の龍山警察署は先月、ADORの現旧役職員とHYBE役職員を再度呼び出して調査した」
「HYBEは去る4月、ミン・ヒジン元代表が子会社であるADORの経営権を奪取しようとした計画と具体的な証拠を確保したとして、背任容疑で告発した。警察は提出された資料と追加の証言をもとに、近々結論を出す予定だ」
「捜査結果によっては、株主間契約解除確認訴訟など法的紛争の勝敗が変わる可能性がある。背任が成立すればHYBEに、逆の結果が出ればミン・ヒジン元代表に有利だ」
原点に立ち返って考えよう。
そういった話だ。
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①話はやはり今年4月22日にHYBE側が提起した「ミン・ヒジン氏の背任容疑」に戻る(警察への告訴は4月26日)。背任があったのか、なかったのか。これが今後を左右する。現在は5月31日に裁判所が下した判断により「背任があるかどうかは分からない」「疑わしきは罰せず」という状態。
②元来の当事者はあくまでHYBEとミン・ヒジン氏。そこにNewJeansが加わってきた。
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4月22日以降、幾多のキーワードが挙がってメディアを賑わせた。BTS、ILLIT、LE SSERAFIM、シャーマン、兵役、株価、名誉毀損、セクハラ、脅迫的な調査、ミン・ヒジン氏の22日の会見でのファッション…しかしこれらは「話の本筋」が何かをわかりにくくもさせた。HYBEの株価だけは本筋に限りなく近い話なのだが。
しかし、9月末時点での「現在地」はこうだ。
背任罪の成立・不成立がやはり現在も最重要事項。関連の捜査が終わり、近日中に結果が発表される。
今後 キーは「ミン氏の機密資料流出疑惑」
では、今後はどうなっていくのか。28日付の「法律新聞」はこう記している。
「HYBEは容疑の立証に自信を持っているが、韓国の法曹界では、これまで公開された証拠だけでは背任罪の成立は難しいとみている。背任は予備や陰謀段階の処罰規定がないため、ミン・ヒジン元代表が経営権奪取を計画したとしても、実行しなければ罪にならないというものだ」
「ただし、ミン・ヒジン元代表が会社に損害を与える可能性のある機密内部資料流出の明確な証拠があれば、背任が成立する可能性は存在する」
確かに4月22日、HYBE側がミン・ヒジン氏に対する背任=経営乗っ取りの疑いがあると公表した際、HYBE側は「内部機密資料の流出」も根拠として挙げていた。5月17日には、ミン・ヒジン氏が外部の出資者候補と接触していた、という点をプレスリリースを通じて指摘している。この際、ミン・ヒジン氏は「知り合いの会食に参加してきた方」「誰だって会食で会社のことを愚痴ることはある」と反論した。
こういった相手に対し、機密内部資料流出の流出があったのか。これが今後を占う重要なポイントとなるという。
法律系メディアとて「予想を転換」 複雑な面も
一方、この「法律新聞」は「NewJeansの参入で状況は悪化した」とも記している。第3の当事者、NewJeansの登場により、法的な観点から見るとミン・ヒジン氏の「勝利」は難しくなった面もある、という意味だ。
同媒体は確かに9月14日付けの記事で同じ記者が「NewJeansが契約解除の訴訟を起こした場合、業界では、メンバーたちが主張する不当な待遇に関する十分な証拠があれば、勝訴の可能性が高いと見ている」と記している。矛盾した表現だ。
同媒体は第3の当事者たるNewJeansについては「勝算あり」から「訴訟をすぐには起こさない」という展望へと変化したのだ。
「すぐに訴訟に発展する可能性は大きくない。裁判所がNewJeansの手を挙げたとしても、商標権をHYBE側が持っており、今後の芸能界活動が保証されないためだ。紛争により発生する可能性のある数千億ウォン規模の違約金問題が障害となっているためだ」
この転換の背景には何があるのか。25日の出来事が影響していると見られる。NewJeansが11日の緊急生配信で「ミン・ヒジン氏のADOR代表職復帰」を求めた期限の日。28日付の「法律新聞」はこう続ける。
「(NewJeansは)専属契約解除訴訟も視野に入れてミン・ヒジン元代表の復帰を要求したが、HYBE側はこれを受け入れなかった」
「HYBE側は代わりに、ミン・ヒジン元代表の社内取締役維持という妥協案を提示したが、ミン・ヒジン元代表が拒否した。NewJeansの残りの契約期間である5年間のプロデュースも提案したが、ミン・ヒジン元代表がこれを拒否した」
「HYBEがミン・ヒジン元代表と妥協する可能性は低い。ミン・ヒジン元代表とNewJeansの要求を受け入れると、ミン・ヒジン元代表の主張(「背任なし」)に正当性を与え、紛争で敗北したように見える可能性があるためだ」
本来ミン・ヒジン氏側の”勝利”とは「背任容疑の払拭」だった。しかしここに「NewJeansの要求=ミン・ヒジン氏のADOR代表取締役復帰」が加わった。勝利の定義の「全体像」が大きくなったというところ。
ミン氏はあくまで強気 「何も悪いことをしていない」「私が勝つ」
あくまで法的な解釈で見ると、そうなるということだ。
では、ミン氏側の解釈はどうだろうか。
本人は27日に、ソウルの龍山で行われたイベント「2024 HYUNDAI CARD DaVinci MOTEL」で再びこの点を強調している。
「私は何も悪いことはしていない」
「私が勝つ」
だから、何も妥協する必要がないのだと。ADOR社内取締役の維持による、残りの契約期間でのプロデュース職の持続の話にも耳を貸さなかった。悪くないのだから、元の状態に戻すことを主張する。そういうロジックだ。
11日のNewJeansのメンバー本人たちによる緊急生配信についても、事前に事情を知らなかったとは考えにくい。「何も悪くないのだから、言いたいことを言いなさい」というスタンスだったのではないか。それが有利か不利かではなく、「悪くない(背任はない)から勝つ」という姿勢が感じて取れる。
いずれにせよ、現状は「近日発表予定の警察の背任に関する捜査結果発表」だ。いっぽう記事は最後に、HYBE側が今後に向けて盤石の体制を敷いている点を伝えている。
「HYBEは訴訟のために既存のキム&チャン法律事務所の他に、去る2月に名誉退職した新たにホン・スンミョン元ソウル高裁部長判事を弁護人に選任した」
国内トップの法律事務所と合わせ、新たな刺客も陣容に加えているというのだ。
(了)
写真=「2024 HYUNDAI CARD DaVinci MOTEL」公式YouTubeアカウントよりキャプチャ