あけましておめでとうございます。
え? 今日はもう1月29日だけど…
いえいえ。今日は韓国での「お正月」。旧暦で正月を祝う習慣がある韓国は現在、大絶賛10日間連休中。
というわけでここで「韓国トレンドに関する新年記事」を(実際に韓国でもこの時期に新年特集記事を出すメディアもあります!)。
ずばり「2025年のK-POPはどうなるのか」。
韓国メディアでは「BTSとBLACKPINKのフルメンバーでのカムバックが予想される大きな一年」との展望もある。
まあそういう情報は他媒体でも読んでいただけるので、ここでは…「韓国のトレンドと合わせて、K-POPがどう変わっていくのか」というちょっと大きな視点からの展望を。
韓国文化が外国文化と入り混じり、また「韓国的なもの」も世界に出ていく
19/27
2024年にデビューしたガールズグループは全体で「27」*だが、じつにそのうちの「19」グループに外国籍メンバーが含まれているという(外国籍を有する韓国系メンバーを含む)。
2023年の5グループ(Primrose, tripleS, X:IN, KISS OF LIFE, EL7Z UP, PUZZLE)から「激増」といえる数字だ。
いっぽう、ボーイズグループは8/21だという。
*ガールズグループのうち、既存グループの派生ユニットは除く。
この傾向がより加速しそうだ。つまりはK-POPの「K」の線引きがより大きく変わっていくというものだ。何をもってK-POPなのか。
「グラデーションK」という言葉がある。
「トレンドコリア2025」という書籍に記されたものだ。毎年10月上旬に発売され、必ずと言っていいほどベストセラーになる。翌年の韓国社会を展望するシリーズものの書籍だ。ソウル大学のキム・ナンド教授の研究チームが韓国の一般ユーザーの協力者に徹底的な聞き込みを行い、その結果を議論して作られる。
同著にあって、2025年の展望を示す一つのキーワードとして挙げられるのが「グラデーションK」だ。
グラデーションというのは「徐々に違いが出てくる」様子のこと。いっぽう「K」とは「Korea」。K-POP、K-FOOD、K-DRAMA… これら単語にも出てくる「K」だが、この言葉の意味があいまいになってきているのだという。
「数多くのK(韓国)コンテンツが海外市場を席巻する中、国内に在留する外国人は250万人を突破し、人口の5%に迫っています。このような状況で『真に韓国的なものとは何か?』という問いへの答えは簡単ではありません」(同著)
そもそも韓国は世界的にも有数の「単一民族国家」という考え方が続いてきた国でもあった。韓国社会には外国人が少ない。韓国人のみが暮らしている。そういう前提で色濃い「韓国的なもの=K」がかたちづくられてきた。
しかし、近年は外国人の比率が増えている。会社の同僚や学校に外国人がいることが当然のことに。すると何か「K」で、何が「K」ではないのか。この線引きが緩やかになっていくということだ。
「Kのグラデーションは、人、文化、市場など様々な領域で感知されていきます。まず、国内の外国人の比重が大きく高まることで、学校や職場での日常が変化しています。コンテンツや食事はもちろん、都市の景観まで韓国文化と世界文化の境界が曖昧になってきていく」(トレンドコリア2025)
韓国文化が外国文化と入り混じっていくし、逆に「韓国的なもの」として作られたコンテンツ・商品が世界にも出ていく。そうやって「グラデーションが出来上がっていく」という。同著ではこの流れについて「K-POP」についても言及している。
「2009年にJYPエンタテインメントのパク・ジニョン代表がWonder Girlsを率いてアメリカ進出を果たそうとしたが、大きな成果は得られなかった。しかし2012年にPSYの”江南スタイル”は世界的に予想できない爆発的な人気を得た。その間にどんな変化があったのか。YouTubeだ。”江南スタイル”のミュージックビデオはYouTubeを通じて世界に速いスピードで拡散し、その後TikTiok、instagram、Netflixのようなグローバルプラットフォームが登場し、ソーシャルメディアがコンテンツの中心地となり始めた。このようなプラットフォームの発達は全世界のコンテンツ消費者たちの趣味趣向を一つの方向に導き、CDのような昔の媒体に固執した日本と違って、グローバルプラットフォームを新しいコンテンツ伝達方法をして積極使用してきた韓国のアーティストたちは全世界的な人気を得た」
「グローバル化」「世界を目指すK-POP」の背景にあるもの
確かにその境界線があいまいになってきている、という現象は現実的に起きている。韓国での「韓国的なもの」が曖昧になり、逆に「韓国的なもの」が世界に出ていく。以下は、2024年の韓国最大の音楽配信サイト「Melon」での年間ベスト100に入った楽曲の”サビ”だ。
Nova
Can’t stop hyperstellaraespa”Supernova”
This time I want
You You You You like it’s magneticILLIT”Magnet”
1-1-9 1-1-9
Save my life save my life
She sets me freeRIIZE”Love 119”
Ooh
Night to morning, live slow motion
I got all I need you know nothing else can beat
The way that I feel
when I’m dancing with my girls
Perfect energy yeah we flawless yeah we free
There’s no better feeling in the whole wide worldLE SSERAFIM”PERFECT NIGHT”
(2023年リリース曲だが2024年にもTOP100入り)
英語が多い。「K-POPは世界進出を目指してる~」という話にしてしまえば簡単だが、じつのところ社会の内側では「グラーデーションK」という変化が起きているのだ。「それ、韓国の歌なのか?」という批判の声が挙がるよりも「それもそれでしょ?」という雰囲気になっていく。
それは今年から急に始まるものではなく、ここ5~6年の韓国社会の傾向でもある。
元々、韓国の人たちは「この年齢だから」「この性別だから」「この地方の出身だから」「ここに住んでるから」「この学校の出身だから」といった属性に囚われる消費傾向が強かった。しかし近年はこれが「自分は自分だ」と考えていくようになる。同著は近年のシリーズで「細胞化社会(個人の趣向がどんどんバラバラに分かれていく)」や「平均喪失(だいたいこの属性の集団の平均がこれくらい、というマーケティングが不可能になっている)」といった言葉でもこの傾向を表現してきた。
2024年は「ソンジェ背負って走れ」というドラマが流行した。その主人公ソンジェを応援するオンライングループには、高校生、主婦、大学生、会社役員など老若男女問わず様々な人が集まって一緒に主人公ソンジェを応援する現象が起きたのだという。「いい歳してドラマにハマる?」「それ10代対象の作品でしょ?」という区別がなくなっているのだ。
同著は「グラデーションK」の根底に、2025年の韓国社会全体の消費キーワード「オムニボア(雑食性)=ひとりひとりが多様な趣向を持つこと」が存在する、とも綴っている。近年の傾向に近いものだ。
「誰がこんにちの(韓国の)人々を年齢、性別、収入で区切るのでしょうか? 雑食性消費、趣味の無限進化、集団の境界が消え、個人の趣味がより鮮明になる『オムニボア(雑食)』消費者が台頭しています」(同著より)
筆者自身、K-POPシーンを取材していて印象的だった言葉がある。2024年11月にガールズグループLovelyzの10周年コンサートをどうしても個人的に観たくて現地に渡った。その際、高校1年生だという現地の若い男性に出会った。どう見ても「2021年に解散したグループのことをリアルタイムでは知らないだろう」という世代だ。
「ネットで見て、解散後に好きになったんです。自分がいいと思ったから今日来たんですよ」
現地でのK-POPのファンにはかつて、「このグループのファンと決めたら他のグループを最後まで応援し続ける」「他のグループは見ない」といった傾向があったものだ。しかし最近は、どんどん「そんな枠は関係なく、自分が好きなように見る」というかたちに変わっていっているという。グループごとに好きになるのではなく、楽曲ごと、推しメンごとに好きになる、という風に。
2025年、SMエンタテインメントはイギリスでのグループデビューを発表している。また2024年下半期にJYPはラテンアメリカ支社の設立を発表した。2023年下半期に「最初からロサンゼルスにオフィス」を宣言し設立したTITAN CONTENTはグローバルオーディションを通じて選抜した5人組ガールズグループ「エトハート(AtHeart)」をデビューさせる予定だ。
Kの概念が曖昧になっていく。この流れは2025年に加速するだろう。これが「トレンドコリア」の見立てだ。
こういった現象を「グローバル化だね~」と言ってしまうのは簡単。韓国社会の内側では「Kの概念が少しずつ変化」し、また一方で「韓国的」として作ったものが世界に出ていけるという現象が起きているのだ。これが2025年の韓国のトレンドの大きな流れの一つだ。
メイン画像=筆者が生成AIにより作成
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