9月30日に報じられた「NewJeansハニが昨今の内紛関連で、国会に呼ばれた」件。 日本メディアもこれを多く報じ、「国会」に「参考人」として「召致」された、と見出しを打つところもあった。
記事を読むと「韓国国会の環境労働委員会の国政監査」に呼ばれた、とある。
なんとも物々しい。これはどういうことなのか。ハニはいったいどうなるのか。いくつかのポイントに絞って紹介する。
①ハニには「欠席の自由」がある…「証人」と「参考人」は大違い
まず、ハニには召致に応じないという選択肢がある。
あくまで、10月に韓国国会に召致された(呼ばれた)の主体はADORの新社長キム・ジュヨン氏。彼女は韓国の国会議員側の質問に答える「証人」として呼ばれた。
一方、ハニはキム・ジュヨン氏と韓国国会議員のやりとりにおいての「参考人」として呼ばれている。
両者には大きな違いがある。そのうちのひとつ、欠席に関するルールはこうなっている。
参考人:適切な理由があり、欠席事由書を提出すれば欠席が認められる。ハニが出席せずとも、キム・ジュヨン氏への質疑は行われる。
証人:欠席事由書を提出しても、常任委員会が見合うものではないと判断すれば、出席の命令を受けることとなる。これに従わなければ告発されることもある。韓国メディア「朝鮮日報」は「キム代表は出席の可能性が高い」と見ている。
②会場は広大な「本会議場」ではない
「国会に参考人召致」と聞くと…大きな本会議場で500人近い国会議員やテレビカメラに囲まれて厳しい質問にも答える…
そんな映像も想像されるかもしれない。
ハニは出席したのなら、そうはならない。
まずは当日のやりとりは、大会議場ではなく、小さな委員会室で行われる(動画は2022年の同じ国政監査時の様子)。
そして、質問する韓国国会議員とキム・ジュヨン氏のやりとりのなかでハニは適宜、国会議員側から発言を求められ、席上からマイクを持って発言するというかたちになる見込みだ。参考までに以下の動画は、今年9月24日に国会で行われた、大韓サッカー協会に関する「懸案事項質疑」で、「参考人」の超有名サッカー解説者が発言するシーン。国会議員が発言を求め、それに応じて立ち上がって発言している。
③「国政監査」って何? ”社会の中でのヤバいこと”を議員が当事者に鋭く聞く機会
ハニが呼ばれるのは、国会のなかで少人数が専門的な議題を話し合う「委員会」主催の調査。韓国国会に17個が設置されている常設委員会のうちのひとつ、環境労働委員会による国政監査に呼ばれた。韓国では毎年10月が「国政監査の季節」だ。
で、韓国の「国政監査」とは何?
ずばり、
「今、韓国社会の公共性が高い場所で、国会議員が”ヤバい(=国政運営の妨げになる)”と感じさせる事象の当事者を、国会に呼んで事情を聞く」
というもの。
ハニの場合は当然のごとく、昨今の「HYBE内紛」が、国会議員が見ても”ヤバい水準”ということになったということ。韓国メディアでは、NewJeansのメンバーが9月11日に行った「YouTube緊急生配信」でのこの発言がきっかけになったと報じられている。
「私は最近ある出来事を経験しました。その(出来事があった)HYBEの建物の階は、ヘアメイクとメイクをやる階で、他のアーティストの方々もたくさん行き来し、他の社員の方々もたくさん行き来するそんな空間です。ある日、私が一人で廊下で待っていたら、他のチームのメンバーと1人のマネージャーさんが私を通り過ぎて、挨拶も交わしました。でも、その方々がしばらくしてまた出てきたとき、そちらのマネージャーさんが私を無視するようにと言ったんです。私の前で、私に全て聞こえて見えるのに無視するようにと言ったんです」
④呼んだのは誰? 最大野党の男性議員
今回、HYBE内紛関連の国政監査の主導役となり、ハニの出席を要請したのは韓国最大野党「共に民主党」のアン・ホヨン議員。9月30日にSNSでこれを表明するや、韓国語ユーザーたちからの批判も浴びた。若いハニにとって酷なことをしたと。一方で本人はこうコメントしている。
「多くの方々の要望に応じて、2024年の国政監査において、ADORの新任代表取締役であるキム・ジュヨン氏を『証人』、NewJeansのハニさんを『参考人』として国会出席を要求しました。K-POPの暗い影、職場でのいじめや、労働法の範囲外にある労働者の実態について、深く調査してまいります。アン・ホヨンのYouTubeチャンネルを通じて関連情報をフォローアップする予定ですので、どうぞご注目ください。K-POP、必ず守り抜きます!」
議員本人は翌日に上記主旨を改めて説明する動画もアップしている。
⑤ハニは「韓国国会議員の激高する姿」は目にするかもしれない
いっぽう、ハニはもしかしたら「キム・ジュヨン氏への質問時に激高する国会議員」の姿を、少し離れたところから目にするかもしれない。
実際に今年の9月24日、「激怒する議員」の姿が報じられた。矛先が向けられたのは、大韓サッカー協会(韓国では政府傘下組織)の会長や代表監督。代表監督人事などで失態を続け、国会で追及を受けた。国政監査ではなく「懸案事項質疑」というかたちだったが…。
「不正はありましたか? はいか、いいえかで答えてください」
「それは…」
「ちゃんと答えてください。はいか、いいえで聞いています」
「ですから…」
「はいか、いいえ! それしか答えはありません」
このようなかたちで、サッカー協会会長らが”つるし上げ”にあった。
この「国政監査」に関する定義をもうひとつ。韓国国会による「オフィシャル版」はこうだ。
「国会の国政監査は、国政運営全般についてその実態をより正確に把握し、立法活動と予算審査に必要な資料と情報を獲得し、さらに国政に対する監視・批判を通じて間違った部分を摘発・是正することによって、憲法が国会に与えた代表的機能である立法機能、予算審査機能および国政統制機能などを効率的に遂行できるようにすることに、その制度的意義がある」
おカタい。
この定義では「国政に対する監視・批判を通じて間違った部分を摘発・是正する」とある。多くは公的機関の責任者が呼ばれるが、公共性の高い企業の責任者が呼ばれることもある。HYBEは韓国内で上場企業だから、当然のごとくこれに適合する。
重要なのは、「監視・批判・摘発・是正」のキーワード。
そもそもが「強い議論」を行うための機会なのだ。質問する議員側は事前に証人側に資料の提出を求め、これを徹底的に勉強して、当日に臨む。時に議員のほうが「質問が緩い」「勉強不足」として批判を浴びることがある。
ちなみに9月24日に開催された、大韓サッカー協会への「懸案事項質疑」では、今年2月から7月までの代表監督選定会議の回数を、協会側は「10回」としていたが、議員側は「11回目があった」という点を突き止め、厳しい追及を行っていた。
韓国の国政監査は通常、10月初旬から20日頃までの間に行われる。証人側への召致通告の期限は「7日前以上」だから、この件の国政監査は早い時期に行われるかもしれない。
写真=HYBE公式サイトより