2022年9月、パンデミックで行けなかった韓国に2年半ぶりに訪れた。まるで浦島太郎状態だった。
その際、若者の街、新村(シンチョン)や弘大(ホンデ)で本当に多く見かけた店舗で驚いたものがある。
「インセンネッコッ(人生4カット)」
これ、何なのかというと…プリクラだ。この一番有名ブランド以外のプリクラ店舗も多く観られた。
韓国語で「自分の人生は自分のもの」という意味。このうち「ネッコッ」を発音の似た「自分のもの」と「4カット」に引っ掛けている。
厳密に言うとこれは商標名で、昨年10月に発売された「トレンドコリア2023」では「セルフ写真館」として紹介されている。最近日本の地上波ニュースでも採り上げられる「一眼レフカメラでスタジオ撮り」ができるものではなく、あくまで日本のプリクラに近いものだ。でもかつてとはちょっと違う。そこのところがポイントだ。

1990年代にも流行したものを「Newtro」で復刻
筆者は約25年前(1997年)にソウルに留学していたが、当時も日本からプリクラが伝わり大流行していた。
「ステッカー写真」と呼ばれていた。皆がこぞって、友達が彼氏・彼女との写真をスケジュール帳(もちろん紙製)にペタペタと貼っていたものだ。親しい人とのつながりを大切にする韓国で流行らないワケがなかった。
これがまた、2022年4月のソーシャルディスタンス緩和後に復活している。友達同士が再び顔を合わせられる楽しみに加え、事業主側とすれば常駐スタッフを置かずとも済む経費面でのメリットもあり、大ブレイクしている。
これは韓国でここ3年ほどの大きなトレンドの流れ「ニュートロ(Newtro)」によるものでもある。MZ世代と言われる10代後半から20代前半が「自分たちの知らない」「インターネットでも情報が少ない」20年以上前のものを、今風に復刻させるという意味だ。

アナログ感覚を楽しむ
それゆえ、2022年版ではちょっとした違いがある。
「裏面にシールがない」
「簡単なコスプレ用グッズがたくさん準備されている」
“4カット”というくらいだから4枚の写真が出てくるのだが、これが4コマ漫画の違う写真で構成が可能。
撮影は10回ほど可能で、そのうち印刷する好きなカットを4枚選ぶ。これを待っている時間が若者にとって楽しいのだという。
「印刷したらどんな感じになるの?」
「4枚並んだらどうなるの?」と。

それをハサミで切って友達と分け合ったり…その場に貼ったりするのだ。前出の書籍「トレンドコリア」は「若者がアナログ感性を楽しんでいる」と記している。
この2022年版プリクラ、ちょっと別の活用法もあるようだ。昨年の11月まで梨花女子大学の語学学校に留学していた海星シャンナさん(埼玉県出身/18歳)は言う。
「撮影費用は基本4,000ウォン(約413円/12月22日現在)くらいですから、これを友達と分けても1,000ウォン(103円)くらいで済む。だから気楽に入って…本来は撮影前の準備用の大きな鏡、ブラシ、ドライヤーを使ってちょっとしたメイク・髪型の手直しに使うんですよ! お出かけ中にちょうどよくて」

ソウルに旅行に行った際にもやってみるしかない!
<了>
文=吉崎エイジーニョ(編集長)
※筆者が「CREA WEB」に記した内容を抜粋し編集して掲載しました。