「ウ・ヨンウ」はどれほどスゴい? ”ソウル大首席卒業” ”韓国司法試験への道” リアル社会では?

とどまるところを知らない「ウ・ヨンウブーム」。

これは日本にも伝わっていて、8月15日のネトフリ「今日のTOP10」TV番組部門でも一位に。

芸能界でも熱烈ファンが続出していて、「仮面ライダー電王」「るろうに剣心」などで知られる俳優の佐藤健も「かわいくて魅力的すぎる」と大絶賛しています。

そこで、今回は韓国の弁護士事情紹介を。

過酷な受験勉強でも知られるこの国の社会。

司法試験合格までの道のりは過酷なの?
給料はいいの?
そしてウ・ヨンウはどれほどスゴいの?
日本の事情との比較をちょっと交えながら。

人口1万人に対してわずか「5人」の狭き門

本題に入る前に「韓国の小学生がなりたい職業ランキング」について。韓国政府教育省と韓国職業能力研究所が2021年5月に共同調査したものです。

1. スポーツ選手
2. 医師
3. 教師
4. クリエイター
5. 警察官・捜査官
6. 調理師・コック
7. プロゲーマー
8. 俳優・モデル
9. 歌手・声楽家
10. 法律専門家

弁護士(法律専門家)はなんとか「ベスト10」に。ちなみに前年度(2020年)には圏外でした…。

日本でも似たような調査があり、2021年には男女いずれも「弁護士」はベスト10に入らず。男子は「サッカー選手・監督」が1位。女子は「医者」が1位に(日本FP協会調査)。

カッコよさは伝わっているものの、「超人気」というわけではない…という「韓国の弁護士」。

国内でのその登録者数は2021年3月の時点で「2万9724人」です(韓国法務省「適正弁護士供給規模に関する研究」報告書より)。

人口1万人に対しての比率は「5.39人」。

これは日本の「3,38人」とくらべてやや多い数値です。いっぽうで日韓両国ともにアメリカの41.28人、イギリスの32.32人、ドイツの20.11人、フランスの10.83人と比べて大幅に少ない人数になっています。

このデータを受け、近年の韓国では「適正な弁護士の人数はどれくらいか」という議論が活発になっています。

いっぽう政府は「欧米主要国並みに増やしたい」立場。しかし弁護士協会側は「競争が熾烈になり、”食えない弁護士”を作りたくない」という主張。現に弁護士協会は2021年の司法試験合格者数を「1076人」に設定。これは「公正ではない」と猛批判を浴びることになりました。

法学部大学院卒+5日間の過酷試験合格が条件

では、実際に「ヨンウ」はどんな過程を経て弁護士になったのか。

韓国では大学卒業後、ロースクール(法学部大学院修士課程)で3年間勉強して司法試験を受けます。日本ではロースクール卒業者以外に「司法試験予備試験」の合格者も受験資格がありますが、韓国は卒業者のみが有資格者です。

そういった過程を経て臨む韓国の司法試験。

これに過酷な勉強が必要なのは言うまでもありません。それは受験日程だけを見ても分かります。試験問題がかなり多く、日程もハードなのです。

1日目:公法:複数選択+事例型+記録型
2日目:刑法:複数選択+事例型+記録型
3日目:休息日
4日目:民法オプション+記録型
5日目:民法判例+選択法(国際貿易法、環境法、知的財産法、国際法、労働法、経済法、税法など)

韓国ではこの司法試験合格後、6カ月の研修を受けた後に弁護士登録が可能に。この期間に「就職活動」が行われます。法律事務所など、各自で受け入れ先を探して行うのです。ヨンウがそうしたように。

弁護士の平均年収に関しては、日本と大差がありません。韓国雇用情報院が発表した2020年職業年俸TOP50では、弁護士は第21位で平均年収9,217ウォン(約920万円)。日本の弁護士の平均年収は945万円です(厚生労働省 2021年賃金構造基本統計調査より)。

ソウル大が”名門”なワケ

ヨンウが首席で卒業したソウル大学ロースクール(法科大学院)はいうまでもない「超名門」です。

それは「韓国の東大=国内最難関大学」という点からだけではありません。

ロースクールの評価は、主に司法試験の合格率で測られます。つまり法の世界では、司法試験の合格率の高いロースクールこそが「名門」なのです。

2020年に韓国法務省が発表したロースクール別合格ランキングは以下の通りでした。

ソウル大学83.53%
延世大学80.15%
高麗大学77.82%

学校の看板ではない、合格率こそが評価なのです。

ちなみに今年3月に就任した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も、ヨンウと同じソウル大学法学科出身。韓国では<79学番>と言われる、1979年入学です。

韓国でロースクール制度が導入されたのが09年。大統領が大学入学後30年経った頃ですから…本人はロースクールには通っていません。

とはいえ、大統領が司法試験に9回不合格し、10回目で合格したエピソードはつとに有名。ヨンウのほか、スヨンなどハンバダの弁護士たちはめちゃくちゃ優秀、だということです。上司のチョン・ミョンソク弁護士は第9話で「在学期間中に合格」とも言っていましたし。

過去19人の首席合格者…法律以外にもスゴい職業に!

ちなみにヨンウのような「ソウル大法学部(ロースクール=修士課程含む)首席卒業生」の卒業生はどれほどこの司法試験にトライしているのかというと…

ちょっと古いですが2009年に「朝鮮日報」系の「朝鮮BIZ」が卒業生を追跡調査した記事があります。

1970年から89年までの19年間の首席卒業者19人のうち、13人が法曹に。逆に別の職種を選んだ6人は…2人が国会議員、2人が大学教授、2人が不明。

試験も大変だし、合格後も大変。いっぽうリアルな「ソウル大首席合格者」はいずれもゴージャスなキャリアを積んでいる…いずれにせよ、言えるのは「ヨンウ、めちゃくちゃスゴい」。そういうことです。