2025年9月15日、SEVENTEENウジの兵役期間が始まった。
10月30日まで韓国・忠清南道の論山(ノンサン)市の陸軍訓練所で基礎軍事訓練を受けた後に、勤務地が決まり、現役兵として1年半の任務をこなしていくことになる。
筆者はこの日に、彼が入営した陸軍訓練所を取材することができた。
知人のY氏(50代男性)に「息子が兵役に行くから、入営式を見に行くか?」と声をかけてもらったのだ。家族と関係者が入営式参加のために施設に入れるのだという。調べていくと、たまたまY氏の息子であるJくんが入営する日と、ウジの入営日・場所が同じだったということだ。
1500人が入営し、兵役生活を始めるその日。
実のところ、そこに「芸能人がいるかも」というそわそわ感は一切なかった。それぞれが家族とのしばしの別れを惜しむ時間。そのことのほうがはるかに大きな意味を持っていた。
【参考】ウジの他にここ論山陸軍訓練所から軍隊生活を始めた主要芸能人
歌手
チャ・ウヌ(ASTRO)- 2025年7月28日入隊、軍楽隊勤
キム・ドンヒョク(iKON)- 2025年7月28日入隊
RM(BTS)- 2023年12月11日入隊
V(BTS)- 2023年12月11日入隊
SUGA(BTS)- 2024年3月28日入隊(社会服務要員)
テミン(SHINee)- 2021年5月31日入隊、軍楽隊勤務
カンイン(Super Junior)- 2010年7月5日入隊
俳優
イ・スンギ(俳優・歌手)- 2016年2月1日入隊
カン・ギョンジュン(俳優)- 2009年6月1日入隊
カン・ハヌル(俳優)- 2017年9月11日入隊
敷地内にはカフェがあった!
Y氏と新兵の息子Jくんが暮らす最寄りの大都市・大田広域市から車で約40分。論山陸軍訓練所は山林の風景を抜けた場所に位置する。この日は14時開始の入営式に備え、10時に大田市を出発した。筆者はY氏の車に乗せてもらい移動。入営するJくんと母・姉は別の車で現地に入り、合流。
筆者と家族4人(Y氏、母、姉、Jくん)の5人で施設の正門に向かった。
「入営通知書を準備してください」
スタッフたる軍人の声が飛ぶ。
ここでJくん本人が入営通知書を提示すると、中に入れた。
なだらかな坂道の両脇には、戦車の展示やキリスト教徒のための協会、仏教徒のための寺院、スーパーマーケットがある。
少し歩みを進めると、そこには日本からの旅行者にもおなじみの看板があった。
「パリ・バゲット」
有名なパンのチェーン店だ。多くの家族はここでパンやコーヒーを買うなどし、横のベンチと椅子が置かれた大きな部屋で、入営前の家族の団らんの時間を過ごしている。
筆者はYさんの4人家族とともにそこで時間を過ごすことになった。そりゃ、申し訳なさもかなりある。父のYさんは外国人の友人たる筆者に韓国文化を見せることにイケイケの感じで、前日には息子のインタビューもブッキングしてくれた。いっぽうで母と姉とはこの日が初対面だった。どう振る舞おうか。かなりそわそわしてしまった。
すると、お母さんの方からこちらに話しかけてきてくれた。
「私、息子が兵役に行く前に、一緒に大阪に旅行に行ったんです。二人で。そこで…コンビニで売っていた牛乳プリンにハマっちゃって! 現地で半冷凍バッグを買って、大量に買って帰ったんです。それくらい美味しかった。あれは日本でも大人気でしょ?」
時計の針は11時半を指していた。入営式の開始まで2時間半。まだまだしんみりとした時間にはならない。入営する本人たるJくんも、スマホでゲームをしている。聞くと、前日に家族での団らんは済ませ、それぞれ早くに自分の部屋に移ったそうだ。父のYさん曰く「あんまり長い時間を過ごすと泣きそうだったから」。
そんな話をしていると、母がこんなことを言った。
「息子は昨日まではわたしのもの。でも今日からは国家のものになるんです」
「昔は息子が『殴られる場所に行く』という不安もあったようですが、今の軍隊はそういったことはありませんから、まだマシです」
「しかもかつての軍人よりも多くお金をもらえるし、使う機会もないから、貯金もできるんですよ」
牛乳プリンから一転、あまりにも見事に韓国の母親の心情を表現する言葉に、こちらのほうがちょっと泣きそうになってしまった。
家族での時間が1時間ほど続くと、父のYさんに声をかけられた。
「敷地の中をちょっとゆっくり見てみようか?」
場内のスーパーマーケットに入った。人でごった返している。なぜか。商品に対し、各種税金がかからないため、価格がかなり安いからだ。
イヤホン 900円
辛ラーメン 82円
シャンプー 300円
入営式では家族がここを訪れ、爆買いをしていくがいつもの風景だという。
いよいよ入営式 別れの時は…
その後、入営式が行われる敷地内の屋根付きの小さなサッカー場に向かった。歩いているとスタッフたる軍人に「9月15日(月)入営案内文」を書かれたプリントを配られた。
スタンドの方に歩いていき、しばしYさんと話していると、本人からこんな話を切り出してきた。
「自分が兵役に行った時を思い出すね。とにかく殴られて。入営式が終わって、家族と別れた瞬間から、『おまえら、調子乗るなよ!』と上官に怒鳴られたんだよね。キツかったよ」
父親は息子との別れと合わせて、自分の若き日を思い出してセンチになるのだろう。
13時過ぎからYさん一家を含む新軍人とその家族が次々とスタンドに集まり始めた。
反対側のスタンドにはロープが貼られ、新兵たちが集まる場所が確保されていた。
女性の声の場内アナウンスが「ではみなさん、別れの挨拶を言いましょう」と切り出す。
「家族から本人へ、元気で行って来いと」
「本人から家族へ、成長して戻ってくると」
すると、一気に「お別れ」のムードが高まってきた。筆者が同行したYさん一家も、母が無言で息子の肩に手を置き、姉が涙を流し始めた。
「では新しく入営する皆さん、家族の元を離れ、スタンド内の指定された場所に行ってください」
このアナウンスの声で、“軍隊生活”が始まる。Jくんは母と握手し、父のYさんは後ろの席でそれを見守る。多くの言葉はかけない。スタンドから他の新兵たちが、いったんグラウンドに降りて、ロープの貼られたスタンドの「集合場所」に向かう。
14時から入営式が始まった。全員が指定の場所に集まると、場内アナウンスが「敬礼」と指示を出す。まだ軍服も着ていない新兵たち全員がそのポーズを取ると、場内から拍手が起きた。これが本当の軍隊生活の始まりだからだ。彼らは後に基礎軍事訓練で敬礼の仕方から正しく学ぶ。だからこの時は家族の前で「ポーズ」だけでも取って見せるのだ。
SEVENTEENのウジもこのなかのどこかにいたのだろう。論山訓練所は大規模とあって、この日の1500人の中から彼の姿を見つけることはできなかった。
入営式はその後、国歌斉唱や軍生活への宣誓など式次第が続いていった。この日、本人たちが着ていた服は2週間後に家族に届けられるのだという。これを見て、韓国の母親はもう一度涙を流す、という。
(了)
【参考 この日配られた「入営案内文」の内容 全訳】
9月15日(月)入営案内文
1. 入営時の注意事項
(1) 持ち込み可能品
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身分証明書
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携帯電話(充電器含む)
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腕時計
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薬(現在服用中のもの)
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チューブ(プラスチック)形の化粧品
(2) 持ち込み禁止品
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現金
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火気類(タバコ、ライター等)
※持ち込んだ場合は返送処理されますので、その他の物品はご両親が帰宅時に持ち帰ってください。
(3) 必要なメモ事項
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保護者の携帯番号(部隊配置案内で使用)
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自宅住所と郵便番号(私服の宅配や軍事郵便発送で使用)
2. 訓練の進行案内
(1) 訓練所属部隊
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第26連隊 第2教育大隊
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第29連隊 第2教育大隊
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所属部隊の編成:入営当日
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訓練兵スケッチ(写真)確認:入営3週目
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私服の発送:入営2週目以降に予定
(2) 訓練期間
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9月15日(月)~10月30日(木)
(3) 修了行事(入営閲兵式)
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第26連隊:10月28日(火)10:00
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第29連隊:10月29日(水)10:00
※修了式の案内は所属連隊からモバイル招待状SMSまたはカカオトークで通知(修了式の1週間前)
(4) 勤務部隊(自隊)分類確認
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10月28日(火)13:30以降に確認可能
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カカオトーク(SMS)通知サービス、またはインターネット(国軍本部 新兵部隊配置照会)で確認可能
(5) 後半期教育入校(兵科学校)または勤務部隊への転属
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10月30日(木)
3. 参考事項案内
(1) 兵士内将来準備積立金(個別事前準備事項/入営当日)
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「兵士内将来準備積立金」とは、兵役義務の履行者が服務期間中に給与を積立し、除隊後にまとまった資金を得て社会進出の第一歩を成功できるよう支援する政府主導の金融商品です。
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円滑な加入のため、入営者は「나라사랑포털(青少年DREAM国軍ドリーム)」アプリを事前にインストールしておくことを推奨します。
続き(2枚目)
訓練期間中の宅配制限案内
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訓練兵は原則として宅配(小包)を受け取ることはできません。
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ただし、治療目的の医薬品や眼鏡などは「郵便局宅配」を利用すれば受け取り可能です(着払い不可)。
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訓練兵の教育修了後に手紙や宅配が到着し、返送となる場合があるため、除隊日(10月30日)基準で7日以内には発送しないようにしてください。
私書箱住所
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第26連隊:忠南 論山市 演武邑 私書箱 76-10
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第29連隊:忠南 論山市 演武邑 私書箱 76-13
ボイスフィッシング被害防止案内
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訓練兵の事故や健康問題を口実に金銭を要求するのはボイスフィッシングです。
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絶対に応じず、必ず所属部隊や幹部を通じて確認してください。
その他の問い合わせ方法
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インターネット
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www.katc.mil.kr → 「よくある質問」メニュー確認
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または「教育連隊別 質問と回答」参照
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部隊電話番号
区分 | 第26連隊 | 第29連隊 |
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第2教育大隊(昼・夜) | 041-740-△△△△ | 041-740-△△△△ |
支援課(昼) | 041-740-△△△△ | 041-740-△△△△ |
連隊 支援統制室(夜) | 041-740-△△△△ | 041-740-△△△△ |
「入営式これだけは必ず!」(YouTube Shorts)
入営式進行時に出席者が必ず知っておくべき内容を含んでいます。
左側のQRコードから詳細を動画で確認してください。