2023年は「冬のソナタが日本で放映されて20周年」だそうです。
2003年4月3日にNHKBSで放映が開始となりました。いわば日本での「韓流20周年」となります。
では日本での「韓流ブーム」とは何なのか。本サイトの「冒頭の言葉」にかえて、ちょっと語っちゃいます。
それは日本にとっての「類似の発見」でした。
のっけから国語や社会の授業のようで恐縮です。「比較」の考え方です。
自分たちと「誰か」を比べる時。
対比:遠くの相手と比較して、自分たちが何者かを知ること。
類似:近い相手と比較して、自分たちが何者かを知ること。
2つの方法があります。
日本では、長い間前者”ばかり”をやってきました。「遠い相手」とばかり比較して自分たちは何者かを知っていたのです。
主にアメリカ、ヨーロッパ。「追いつけ、追い越せ」の発想から戦争までやり、その後は復興の過程で「追い抜く」こともあった。まあよく言われる開国から明治維新、戦後復興からバブルまでの歴史です。
その後、2000年代前半に前述の現象が起きます。
「冬ソナブーム」
韓国に目が向いた。それは何だったのか。
「近い相手」との比較に気づいたのです。
「あ~似たものがあんのね」と。
冬ソナは「日本の昔の雰囲気を感じる」などと言われたものですが、それが意外と心地よかった。その後、韓国に関するブームは「文化」にも波及していきます。
ごはんの例えが「類似」を説明するのにわかりやすいでしょう。
「韓国料理って辛い~」という話は事実です。
でも「同じ」だと筆者は考えます。20年来、日本と韓国を往来するなかで「あんまり違いはないな」と思うようになりました。
ごはんが同じなわけです。つまり主食が同じ。
ベチャベチャの「ジャポニカ米」。
日本にとって主食が同じ、という国はほとんどない。これだけでももはや”同じ”。現地に旅行に行っても「同じ飯が食える」わけです。
そんな国、他にありますか?
稲作が元々朝鮮半島から伝わった、という話はここではさておき。
じつはジャポニカ米「世界のコメ生産量約5億トンのうち、15%に満たない」もの。日本、朝鮮半島、中国の淮河以北、台湾が主要な地域だそうです。世界で米といえば「インディカ米」。いわゆる「タイ米」のことなわけです。
もうそれだけで貴重な「類似の比較対象」。「すごく似ていて、確かに違いがある」のだと。
日本と韓国の比較は、この点に価値があります。
では、なんでこれが03年まで「発見」されてこなかったのか。理由のひとつは「日本のコピーだ」だと捉えられていたことです。
2010年(ガールズグループブーム)が起きた直後は確かに「韓国の作曲家は日本の影響を受けている」という話をよく見聞きしました。韓国の作曲家本人たちは悪いこととは思っていないからあっけらかんと言う。しかし日本側がそれを面白おかしく捉えるという。
実際に2010年に出てきたKARAの時代までは、日本のマーケットではあくまで「日本っぽさに合わせる」という手法を取ってきました。代表曲「ミスター」は、韓国語オリジナル版では「あんた名前なんなの?」と挑発する歌ですが、日本語版では「あなただけミスター」と片思いの歌になっていった。でもやっぱり韓国発の原曲もダンスもスゴイから、日本でも受け入れられた。
しかし、その後その見方が変わりました。10年が経ち、今は第4次韓流ブームだとも言われています。主役が「Z世代」に移った。するとこんな変化が生まれています。
「韓国から、日本よりももっとスゴイものが出てくる」
「むしろ『韓国っぽ』がよきもの」
今流行の「ガルクラ」がそうでしょう。K-PPOPの女性グループが繰り出す「ガールクラッシュ」。カッコよくて主張できる女性像に共感を覚える。そこに日本人メンバーがいるのはもはや当然となっている。
もはや「日本ぽくするんじゃなく、韓国の中に日本を入れて(メンバーを入れて)、コンテンツを作り出す」という流れすらあるのです。
だからこそ、いま私たちはものすごく楽しい20年を生きています。社会の価値観が大きく変わる20年です。
この時にこそ注目すべきなのです。
韓国のトレンドを研究するということは、つまり「日本にもこれが当てはまりうるか」「有益か」という点を調べる研究でもあります。
日本と韓国にはさっき言ったコメのみならず、資本主義・民主主義(この点は細かく見ると違いはありますが)・漢字文化圏・儒教文化圏などの共通項があります。最近では「少子高齢化が世界最速のスピードで進む2カ国」という類似点もある。
こんなに要素が近い国は他にない。それでいて確かに違う国もない。
そこと日本を比較して、新たな日本像を照らし出せばよいのです。アメリカや中国、欧州との比較は別の専門家に任せましょう。
筆者はサッカーのジャンルでこの「類似の比較」を確立してきました。既存の研究やジャーナリズムは「ヨーロッパ・南米と比べた日本」を描くことでした。しかし筆者は「同じ東アジアの国と比べたらどうなる」「韓国から照らし出す日本の姿」に特化して執筆してきました。
いまこの比較手法を、より幅広いジャンルに広げます。「韓国社会トレンド」を紹介しつつ、「それが日本にとって何なの?」「で、日本はどうなってるの?」を追求します。繰り返しになりますが、それこそがこの研究の価値です。暑苦しくならない程度に。
長文失礼。
本サイト「冒頭の言葉」にかえて。