(アフィリエイトを使用しています)
年も明け、いよいよここからが冬本番。一年で一番寒い時期がやってくる。
そんな時期、日本での”韓国トレンド”として外せないのが”韓国製ノースフェイス”ではないだろうか?
日本の通販サイトを見ていっても、韓国オリジナルの「ホワイトレーベル」のラインナップや 、軽量で保温性の高い「ヌプシ」のダウンジャケットなどが上位に入っている。これらは韓国市場向けに特別にデザインされたもので、日本では並行輸入でのみ手に入るユニークなアイテム群だ。
ブランドのイメージキャラクターも豪華メンバーで、「ホワイトレーベル」はチョン・ソミとイソ(IVE)、グローバルアウトドア部門にはイソのほかソン・ナウン(元Apink)、そしてチャウヌ(ASTRO)が起用されている。
ノースフェイスは本来、1966年にアメリカで生まれたアウトドアブランド。いっぽうで「ホワイトレーベル」は2011年から韓国独自のラインナップとして製造販売が始まっている。なぜ韓国でオリジナル製品を多く発表しているのか。
そもそも韓国でのノースフェイスの認知度はめちゃくちゃすごい。1997年に韓国に上陸して以来、2010年代前半に一度ブームの絶頂期を迎えた。
当時、高校生がほぼみんな来ていたことから「北面高校の制服」という単語が生まれるほどだった。「北=ノース」「面=フェイス」。架空の学校名は「プンミョン高校」だ。
その後一時低迷期を迎えるが、その後ファッションブランドとしても復活。2024年3月には韓国内のブランド評価会社が選んだ「アウトドアブランド評価1位」に11年連続で選ばれている。
韓国ノースフェイスは、アメリカの有名アウトドアブランドでありながら、特異な発展を遂げてきた。その背景には、韓国企業「ヨンウォン貿易」による独自の運営体制がある。
1974年設立で、ソウル駅近くに本社を構えるヨンウォン貿易。衣料・シューズなどを製造してきた企業は、その事業の一環としてノースフェイスなどの製品の企画・製造も手掛けてきた。そのため、現在でも韓国でのノースフェイス製品の多くに「Made in Korea」と表示されており、韓国内では自国ブランドだと誤解する消費者も少なくない。
この企業とノースフェイスブランドの縁にはある特徴がある。「日本企業経由」でオリジナル商品を製造・販売しているということだ。デザインを頼る、という話ではない。ライセンス構造が特徴的なのだ。同ブランドのアジア営業総括ライセンスを保有するのは日本企業であるゴールドウィン。ヨンウォン貿易はノースフェイスの純売上高の5%、仕入額の7%をデザインなどの手数料としてゴールドウィン社に支払っているとされている。
こういった体制であっても、韓国のノースフェイス製品はオリジナリティを誇っている。
これに至った決定的な転機は、アメリカ本社の経営危機にあった。
アメリカ本社は4度の破産を経験している。北米でのブランドの認知度こそ高かったが経営陣が優れていたとは言い難く、4度の破産のうち1度はビジネスは順調だったが、不正会計で倒産するという有様だった。
その窮地から脱することができたのは、ヨンウォン貿易が韓国で大成功を収め、送金した資金があったから。韓国ではそう報じられている。
結果、ヨンウォン貿易は企画から生産、販売まで事実上独自にノースフェイスブランド製品を生産する体制を確立した。
韓国の最大手経済紙「毎日経済」によれば、このような独自路線は1997年のノースフェイスの韓国市場参入以来、一貫して続いている。2007年には韓国アウトドア業界で初めて子供向け商品ラインを開始し、2011年にはライフスタイルコレクション「ホワイトレーベル」を韓国限定で展開。これは日本でノースフェイスが「パープルラベル」ラインを展開しているのと似たものだ。
韓国の「ホワイトレーベル」は、若年層に向けた多様なライフスタイルを提案している。
「伝統的なアウトドアブランドである『ノースフェイス』のDNAとデザインアイデンティティを維持しながら、実用性とファッション性を採り入れている」(韓国ノースフェイスのプレスリリースより)
例えば韓国ノースフェイスの代表的なダウンジャケットシリーズである「ヌプシ」。これもホワイトレーベルでは、素材やカラーブロックの処理、配色を変更して提供したり、『THE NORTH FACE』のロゴを前面や背面だけでなく襟にも配置するなど、韓国以外では見られないデザインを提案しているのが特徴だ。また、ルーズフィットやトレンディなディテール、ゼブラやレオパードといった独特なパターンも同様だ。
韓国ではこの「ホワイトレーベル」、ノースフェイスの店舗内に複合展開するだけでなく、『ノースフェイス ホワイトレーベル』として独立した看板を掲げて単独展開されている。デパートでは、アウトドアゾーンの『ノースフェイス』とは別に、スポーツゾーンに配置されているほどだ。
これらの取り組みは、「登山服」として位置づけられてきた国内アウトドア用ウェア市場の発展と拡張を導いたと評価されている。
その間の技術革新も特筆すべき点だ。2014年には世界で初めて「責任ダウン基準(RDS)」を導入し、同年に人工充填材「Vモーション」「Tボール」を自社開発。2016年には全製品で動物の実毛を使用しない「ファーフリー」を実現した。
韓国での認知度をさらに高めたのが、2018年には平昌冬季オリンピック・パラリンピックのスポーツウェア部門公式スポンサーとして活動し、代表選手団「チームコリア」のキットサプライヤーにもなったこと。のみならず2010年から韓国スポーツクライミング代表チームの公式スポンサーを務めてきた。
こういった取り組みの結果、2023年11月時点で前年同期比30%以上の売上増加を記録し、2023年の累積売上は1兆ウォンを達成。アウトドア売上2位のブランドとの差を2倍以上に広げている。
経済紙「毎日経済」は、同社がさらなる発展を目指し、環境配慮型製品の開発に注力していると報じている。「K-エコテック」技術により3000万個以上のペットボトルをリサイクルしたエコフリースの製造に成功するなど、新たな価値創造にも取り組んでいる。このように、韓国のノースフェイスは、生産力を持つヨンウォン貿易という強力なパートナーの存在と、本社の経営危機という特殊な状況が重なったことで、グローバルブランドでありながら実質的に韓国独自のブランドとして発展を遂げたのだ。すご過ぎるヨンウォン貿易! ちなみに韓国内では「ヨンウォン」というブランドで、ノースフェイスと同規格の商品も販売されている。知る人ぞ知る事実で、価格がノースフェイスよりも安いため、これを求める人もいるのだとか。
写真=NorthFace KOREA