BTS – ‘MIC Drop (Steve Aoki Remix)’
SEVENTEEN – ‘HIT’
NCT DREAM – ‘Hot Sauce’
SHINee – ‘View’
(G)I-DLE – ‘Queencard’
aespa – ‘Next Level’
ITZY – ‘WANNABE’
BLACKPINK – ‘How You Like That’
TWICE – ‘I CAN’T STOP ME’
さて、これらの楽曲の共通点は何でしょう?
答えは
「曲の公式説明に『HIP(ヒップ)だ』という言葉が入っている」
例えばSEVENTEEN – ‘HIT’。
「SEVENTEENのエネルギッシュでパワフルなパフォーマンスを込めた曲で、EDMとヒップホップを融合したHIPでトレンディーなサウンドが特徴」
(G)I-DLE ‘Queencard’ではこうだ。
「大切なのは外見ではなく、ありのままの『自分』を受け入れ、愛することというメッセージを込めた曲で、堂々としてHIPな態度が際立つ」
ここ数年で急激に流行っている、という言葉でもない。「韓国日報」では2016年の時点でこの「HIPだ」についての解説も出ており、すでに10年以上にわたって韓国では広く使われてきた言葉でもある。筆者の体感では「韓国ではめっちゃ使われてるけど、日本ではあまり浸透していない言葉」。日々K-POPを研究するなかで「なんかよく出てくるけど、どんな意味なんだろう?」と感じてきた言葉でもある。ここでご紹介を。
HIPだ。韓国語だと’힙하다(ヒプハダ)’
ああやって着るとHIPだね
あの人の価値観がHIP
このカフェ、ホントにHIPだ
こんな風に使うらしい。
元々の語源は英語の「Hipster(ヒップスター=主流の流行にこびず、自分のスタイルを探せる人たち」。1960年にアメリカで流行った、旧来の価値観に対抗するカウンターカルチャー の一翼を担った若者たちによる「ヒッピー文化」の語源でもある。
韓国でこの「HIP」という概念が知られ始めたのは2002年W杯の後。現在のホンデが、近くにあるワールドカップスタジアムの整備後に大きく発展した。そこで「主流に抗うこと」インディーズ文化が発展していった。
これが2010年代中盤から韓国で広まる段階で、「あくまで流行が分かった上で、自分のスタイルがあってカッコいい」という意味に変化したという。
韓国でのZ世代のトレンドを追う最高峰メディア「Carret」は、2021年5月27日の記事でこの「HIPだ」の意味を紹介している。
「『ダサくなくておしゃれだ』、『古臭くなくてクールだ』、『魅力的だ』などを表現するとき、『ヒップだ(힙하다)』という言葉をよく使います。つまり、以前の世代が使っていた『대박이다(デバキダ:すごい)』や『쩐다(チョンダ:やばい)』の現代版というわけです」
要はカッコいい、スゴイといった意味。同メディアはより細かいニュアンスとして
「親環境的」
「多様性を持っている」
「よい影響力を発揮している」
「真面目に生きてる」
といった要素を紹介している。
まあ、辞書やメディアの言う意味もさることながら、実際に韓国の若者たちはこれをどういう意味だと理解しているのか。
筆者もまた、韓国の若者にこの単語の意味・ニュアンスを直接聞いたことがある。
その相手は…
「STAYC」
2023年12月に都内でインタビューした。彼女たちがその時日本でリリースした「LIT」の韓国語版の公式解説でも、「HIPだ」という言葉がたくさん出てきたのだ。
STAYC、本日(6日)日本で新シングル’LIT’発売→ミート&グリート開催…現地ファンとHIPな出会い ‘期待感UP’
HIPは、日本とも縁があった…。そして音楽性についても「HIP」だと。
速いBPMのジャージークラブリズムと強烈な808ベースのドリルビートがダンスチューン感を醸し出し、重厚なヒップホップジャンルと楽しいシンセサウンド、キッチュなメロディの調和がHIPでありながら明るいエネルギーを伝えている。
その流れで気になって聞いてみたのだ。
その時のインタビューから引用を。
―お聞きしたいのは、「HIPだ」という言葉についてです。今回の公式曲紹介の中にも何度か出てくるんですよ。これ、実はK-POPの曲解説でも頻出ワードですよね。韓国でのトレンド用語であるようにも思えます。どういう意味なんですか?
ユン:ここでいうHIPというのは、言葉どおり、音楽のジャンルですね。ご存知のHIP HOPです。
スミン:今回の「LIT」の楽曲のベースが、HIP HOPで多く使われる808ベースにビートが入ってきているんです。これまで私たちが多く見せてきた曲とちょっと違う感じのビートなので、HIP HOPという意味で「HIPだ」という意味が入っているんだと思います。
―韓国のトレンド用語としてもよく出てくるこの「HIP」、じつはこちらでも辞書で調べてみました。「環境を考慮していて、それでいて自分だけのスタイルが主張できる」っていう意味のようなんです。合ってます?
シウン:「私たちだけの主張」という意味は合っているように思います。でも「環境に優しい」というイメージはちょっとないですね…。
スミン:確かに今回のプレスリリースでは「HIP HOP」という意味なんですが、韓国では普段も「HIPだね」あるいは「SWAGだね(心を揺り動かすね=カッコいい)」といった言い方をします。
セウン:なんというか「いい感じがする」といったところですね。
スミン:主張をはっきりとできる、自信にあふれているという対象に対して「HIPだ」という反応が出てくると思うんです。だから「HIPだ」というのはカッコいいんですよ。
出典:STAYC 新曲「LIT」の意味をメンバー本人たちと掘り下げてみたら出てきたこと(2023年12月24日 Yahoo! ニュース エキスパート/筆者による)
HIPだ=今の韓国風の「カッコいい」。まとめてみるならば「自分なりのスタイルを持ってて、ちゃんと自己主張をできるカッコよさ」ということか。以下のK-POPの楽曲にそういった要素、含まれているだろうか。
NCT DREAM – ‘Hot Sauce’「NCT DREAMの爽やかでヒップなエネルギーを込めた曲で、独特なサウンドと中毒性のあるサビが印象的」(SMエンタテインメント)
ITZY – ‘WANNABE’「他人の基準に縛られず、自分らしさを示すというメッセージを込めた曲で、トレンディーでHIPなパフォーマンスが際立つ」(JYPエンターテインメント)
MAMAMOO – ‘HIP’「他人の目を気にせず、堂々と自分を表現するヒップな態度を込めた曲」(RBW)