9月11日のあのNewJeansメンバーによる衝撃的緊急生配信。その後の韓国での反応は?
ある意味「捨て身の行動」に出ざるを得なかったNewJeans。「明らかな不利」が予想されたが、必ずしも「絶対的不利」でもない。あの日の訴えが有利に作用する面もある。
騒動はもはやエンターテインメント業界の話だけではなく、法律の解釈にゆだねられる面も大きくなっている。情報が錯綜(さくそう)するなか、韓国メディアではこの1週間で次々と法律関係者のコメントや解釈が報じられ始めた。
話の本筋の内容を伝えていくためにも、「紹介すべき内容」だ。
「法的に見ればこの案件について、HYBEに過ちはない」
法務法人カロスのキム・ピルソン弁護士は、14日付けの「京郷新聞」の取材にこう答えた。NewJeansとの契約はHYBEとの間に結ばれており、これが破棄されるのであれば違約金を請求できる。ADORの人事権も有している。
ただし―― といってキム・ピルソン弁護士はこう続ける。
「ビジネスは法だけでするものではない。法は最後に、本当に最後の手段として意味がある」
韓国の弁護士たちが発行するメディア「法律新聞」もまた、「必ずしもNewJeans圧倒的不利=HYBE圧倒的優位ではない」という論調を伝えている。14日に「NewJeans・HYBE、最大5000億ウォン級の訴訟戦が一触即発…『14日期限付き』最後通牒」という記事を掲載した。
この記事では、NewJeansがHYBEに与えた2週間という期間に注目している。これは専属契約解除のための事前手続きと、韓国の弁護士業界では見られているという。
では、何をもって「NewJeans絶対的不利ではない」とするのか。
同メディアをはじめとした韓国弁護士業界の近辺ではこんな見立てがあるという
「NewJeansとADORの専属契約には『契約内容に違反した場合、相手方は違反者に14日間の猶予期間を与えて是正を要求でき、是正されない場合は契約を解除または解約し、損害賠償を請求できる』という条項があるのではないか」
だからこそ、NewJeansは9月11日に緊急生配信を行った際に「ミン氏を代表取締役に戻してほしい」という要求の期限を25日に定めた。こうやって是正要求と猶予期間を与えた後、専属契約解除仮処分に踏み切る戦略ではないかという解釈だ。
法律新聞はこの点について、韓国弁護士の業界内の見方をこう伝えている。
「NewJeansが契約解除訴訟に踏み切れば、業界ではメンバーたちが主張する不条理な待遇についての証拠が十分であれば勝訴する可能性が高いと見ている」
「アーティストと所属事務所間の契約で『信頼』が最も大事な要素で、所属事務所がマネジメント業務を遂行する能力があるにもかかわらず義務を果たさなければ、信頼関係の破綻と見なされる」
これまで韓国の裁判所は、芸能人が提起した専属契約効力停止仮処分申請でほとんど芸能人に有利な判決を出してきたという。
他の法律関係者たちも「HYBE必ずしも圧倒的優位にあらず(優位には違いはないのだが)」という見解を示している。
「スポーツソウル」の取材に応じた法律事務所キム&チャン出身のコ・サンロク弁護士は、NewJeansのライブ配信に関して「HYBEを公開批判した時、NewJeansが客観的に得るものより失うものが多い」としつつ、こう答えている。HYBEの危機管理の問題点をかなり辛辣(しんらつ)に指摘した。
「このように行動したこと自体が真摯(しんし)さがあるからであり、裁判所で力を発揮する可能性がある」
「HYBEに能力がないというのではなく、NewJeansが築いてきたアイデンティティーがあり成長している状況で、このような形でNewJeansが“シーズン2”を始めれば、工場で作られる量産型アイドルだという点を見せつけることになる」
前述の「HYBEに法的落ち度なし」のコメントを残した法務法人カロスのキム・ピルソン弁護士も、HYBEの対応をかなり批判的に見ている。
「エンターテインメント事業はイメージで商売をする。最も重要なのは大衆に見せるイメージで、それをうまく作り、うまくラッピングし、うまく管理すること。これがエンターテインメント事業のすべてと言っても過言ではない」
「HYBEは自分たちが大衆にどのように映るか、NewJeansがどのように対応するか、その対応がどのような影響を与えるかを事前に見極めるべきだった」
「多くの場合、法を探さなければならない状況になれば、すでに最悪の事態に陥っているということだ。経営陣が数字だけを見て台無しにした。国会議員よりエンターテインメント業界を知らない」
「私が経営者だったら、ミン・ヒジン事件が起きた時、まず最初にNewJeansの心理状態から気を配ったはずだ」
「バン・シヒョクHYBE議長が直接NewJeansに会って慰め、自分がNewJeansを直接責任を持って面倒を見ると信頼を与えるべきだった」
ただし、HYBE側は「絶対的優位」ではないが、「法的に優位」であるという点は動かない。
前出の「法律新聞」は14日の記事で「ミン氏のADOR代表取締役解任の効力停止仮処分が認められたとしても、NewJeansメンバーたちがスムーズな活動ができるかは未知数」とする。
NewJeansというチーム名はもちろん、これまで発表した音源の権利などがADORに属しているため正常な活動が難しいうえ、違約金と損害賠償の問題は依然として残るため、だという。
「(韓国)公正取引委員会の標準専属契約書によると、契約解除時、直前2年間の月平均売上に残りの契約期間の月数を掛けて違約金を算定する。ADORの昨年の売上は1103億ウォンだ。NewJeansの残りの契約期間は5年程度とされる。最低3000億ウォンから最大5000億ウォンの違約金が発生する可能性がある計算だ」
さらに、HYBEがタンパリング(契約満了前の事前接触)を問題視すれば、問題はさらに大きくなる可能性があるという。
「NewJeansがADORとの契約を解除した後、ミン代表が新たに設立した会社で活動すれば、これは問題になる可能性がある」
ただし「タンパリングの基準は明確でなく、外部勢力の介入を立証するのは難しいが」ともいう。
法律新聞はさらに、ミン前代表とNewJeansの親密さを根拠に「ミン・ヒジンがNewJeansを引き込んだ」としてHYBEが損害賠償訴訟を提起すれば、これもまた「将来HYBEの子会社であるADORが稼ぐことができたであろう予想売上額である5000億ウォン以上の紛争(違約金に関する法廷闘争)に発展する可能性」があると伝えている。
繰り返しになるが、HYBEの優位は変わらない。だからこそ、11日のあのNewJeansのアクションは「情に訴えるより他ない」という窮状を表すようにも見えた。600億円にもなりうる違約金を調達できなければ、「飼い殺し」――。
しかし「内情を話すこと」「HYBEがその運営能力を不誠実により発揮しなかったこと」を訴えれば、状況は変わりうる。あの日の彼女たちの訴えは、法的にも有効性を持ちうるのだ。これが韓国メディアの報じる「法律家たちの見立て」でもある。